またまた遅くなってしまいましたが、
「第2回日本小児在宅医療・緩和ケア研究会」
の報告第二弾。
第一弾は一つ前の日記をご覧ください。
今回は、シンポジウム1の総合討論と、全体的な感想を書かせていただきます。
<総合討議>
・埼玉医大・田村先生より:
埼玉小児在宅医療支援研究会を設立して、小児科開業医の先生に重症児の診療を依頼してもなかなか受け入れてもらえない。小児科開業医の先生に頼むのと、成人を診療している在宅医の先生に頼むのと、どちらが受け入れてもらえやすいのだろうか?
→にのさかクリニック・二ノ坂先生:
在宅医の先生にとっては、重症児の在宅医療も基本的部分では在宅医療の経験で成人と共有できることが多い。訪問診療では、小児科医の先生よりも在宅医の先生の方が受け入れやすいかもしれない。
→フロアから・小児科開業医の先生:
小児科開業医の立場からすると、重症児の訪問診療は不採算生が大きすぎる。
よほどポリシーを持っている先生以外に広げることは難しいと思う。
在宅医と小児科医の連携ができるシステムがあればよいのではないかと思う。
→フロアから・あおぞら診療所墨田・前田先生:
小児専門で在宅医療を行っている墨田では、総収入の35%が物品や機器のリース代などで消える。これは、ほとんどが人件費と言われる医療業界においては非常に高い割合で、重症児を診れば診るほど収益性が低くなるのが現状。制度的にここを改善していく必要がある。
→群馬大・吉野先生:
同じ在宅医でも、元々のスペシャリティーによって重症児の受け入れハードルは違う印象がある。
重症児には色々なデバイスが付いていることが多いが、成人の在宅医療ではデバイスが付いている患者さんはそれほどいない。デバイスに対して抵抗感が少ないスペシャリティー、例えば麻酔科・救急科、外科系の先生方は、内科系の先生方より受け入れてもらえる可能性が高いのではないか。
・フロアから・堺市立重症心身障害児支援センター準備室・児玉先生
小児の在宅医療の話をしていても、いずれ小児は成人になる。
重症児が成人になった後のフォローをできる医師が少ないことも大きな問題であり、また全国の重心施設のベッドの大半を成人が占めているのも現実である。
成人になった後のフォローをどうするのかという議論もぜひ同時進行で行っていって欲しい。
<感想>
近年、小児関連の学会では小児の在宅医療についての演題が集まるようになっているが、「○○がない」「○○が求められる」というような、現状では小児の在宅医療の基盤が整っていないことをアピールする内容が多いように思う。
しかし今回は、「ないのは分かった。じゃあどうすればいいのだろうか?」という一歩踏み込んだところに主眼を置いたシンポジウムであったように感じた。
フロアとの討論の中で、「制度がないからできないんじゃなくて、『必要だからやろう』というところから始めよう。そうすると制度は後から付いてくる。」という発言があった。今回のシンポジストはまさに、患者家族の立場、病院医師の立場、在宅療養支援診療所の立場から、それぞれ「必要だからやろう」と何かを始めた方ばかりで、とても刺激になる。
具体的な議論内容については、小児科医と(主に成人領域の在宅医の)コラボレーションがどうすれば可能か、ということについては、私が今後やりたいと思っている仕事ともリンクする。
様々な方を巻き込んだサポート体制を地域で作るお手伝いの仕事はぜひ考えていきたい。
また、成人になった重症児のフォローというのは大きな問題なのは間違いない。
私は、訪問診療や訪問看護などの在宅医療は一つの対応策になりうるのではないかと思う。
小児科・内科などの壁を越えた存在として、新生児期からお看取りまで、生活に寄り添う存在になれれば・・・。
先輩方が、「必要だからやろう」と始めてくれたおかげで、その後に続く担い手候補が私を含めて増えてきているのは事実だと思う。
また、今までほとんどNICUと連携がなかったと言っても過言ではない、訪問看護ステーションをはじめとする在宅医療の方や福祉関係の職種の方と、フラットな議論ができる場面が増えていることも間違いないと思う。(まだまだ少ないですが)
こういう動きが少しずつ増えていって、医療のサポートが必要な子どもが自宅で暮らすことがごく当たり前の世の中になっていけばいいな、そのためになるような仕事をしていきたいなと感じた研究会だった。
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