「世間は水飴、自分は割り箸」────。
これは私が以前勤めていた病院の副院長先生の言葉で、以来ずっと私の座右の銘になっています。
当時の私は、ちょうど診療にある程度の自信を持ち始めていました。自信が芽生えてくると、組織やそれに属している個人に対して、「なぜ、すぐにでもできる改善をしないのか?」「なぜ、もっと外に出て勉強しようとしないのか?」というような、怒りを伴った苛立ちを募らせるようになりました。
今思えば当時、私は、私の意見に好意的な反応をしてくれる人を集めて、意見の異なる人の欠点や失策を攻撃することで、無理矢理に組織の改善を進めようとしていたように思います。
そんな私のやり方を見て、副院長先生がある日私に言ったのが、この言葉です。
「お前のやっていることは、水飴を思いっきり割り箸でかき回しているようなものだ。水飴というものは、ゆっくりかき混ぜないと、混ざらない。お前みたいに思いっきりかき混ぜても、水飴が混ざらないどころか、割り箸の方が折れておしまいだ。」
この言葉には本当に「ハッ」としました。
確かにこの頃、私はいろいろな場面で多かれ少なかれ疎まれだしていたように感じており、がむしゃらに訴えても何も変わらず、自分自身が燃え尽きてしまいそうな気分になっていたのです。
それ以来、自分の主張を他人に分かってもらいたい、何かを変えていきたい、と思うときには、ヒートアップする自分に対して心の中で「水飴、水飴・・・」と唱えて、ゆっくりじっくり時間をかけて、考えを伝えるように心がけています。まだまだ未熟者ですので、時には思い切りかき回してしまっている自分に気づくこともあるのですが・・・。
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