このたびの台風19号による被害、本当に大きなもので心を痛めています。
去年、大阪府でも台風21号が直撃し、関空連絡橋にタンカーが衝突するなど大きな被害が生じたのは、記憶に新しいところです。
当クリニックでは幸い人的被害はなかったものの、飛来物で往診車が1台破損し、廃車になるという被害を受けました。
また、その時には広範囲で停電が生じ、在宅酸素や在宅人工呼吸器などの電源を要する器械を使用されている方への対応について、考えを始めるきっかけとなったのも事実です。
思えば、2011年の東日本大震災の時、私は千葉に住んでいて、直接的な被災はなかったものの、鳴り響く緊急地震速報のアラームと、甚大な被害の報道を、毎日のように聞かされていました。
そして、「計画停電」という事態に対して、どうやって在宅医療用の電源を確保するのか、走り回った経験もあります。
それなのに、恥ずかしながら、私は去年、台風21号の被害を受けてから初めて、ハザードマップというものを見たのでした。
どうも災害というのは、「自分の身には降りかからないだろう」という都合の良い思い込みで、人ごとのように感じてしまう傾向があると、今回の19号の報道でもたびたび言われています。
私もご多分にもれず、その1人ということですね・・。
このブログを読んでくださっている皆さんには、ぜひこの機会にご自分の身近なところのハザードマップをご覧になってください。
例えば、クリニックのある堺市のハザードマップは、堺市のHPから見ることができ、いろいろな具体的な対応が記載されています。
津波ハザードマップでは、エリアごとに避難する先の目標となる場所が記載されており、基本方針として「JR阪和線を目標に、東の高いところへ徒歩で避難しましょう」と分かりやすく書かれています。
また、各区ごとの浸水や土砂災害の予測についても、かなり詳細に地図に記載があります。クリニックのある堺市南区の「土砂災害・洪水ハザードマップ」でも、最寄りの避難所の位置なども含めて、確認が可能です。
度重なる災害を受け、訪問診療の際に「洪水が来たらどうしよう」「停電になったらどうしよう」というご質問をいただくことが増えています。
去年の19号の時にも、直接電話で「停電した」との相談もありました。
しかし、その時に感じたことは、「災害の時に頼ろうと思っていた人が、被災していて動けないこともある」という、当たり前ともいえる前提があることなのです。
事実、19号の時、小さな被害ではありましたが、当クリニックでは往診車が破損し、その片付けや、他の往診車の動作確認、クリニックの設備の状況確認などに時間を取られる事態となっていました。
周囲の道路の信号は停電で消え、倒木や飛来物がいっぱいで、幹線道路のクルマは大渋滞・・。
また、固定電話がつながりにくくなり、電話の発信が数回に1回しかつながらない状態が夜まで続きました。
(これらの状況は、当時のブログをご覧ください)
繰り返して災害を経験された方にお話をうかがうと、皆さんおっしゃるのは被災後すぐの混乱期を乗り越えるための自助・共助の重要性で、特に在宅医療を必要としている方ではその重要度が増すと考えられます。
・台風など、予測が可能な災害の場合には、事前に(「避難準備情報」の段階で)安全な場所への避難を行動に移す。
・電源が必要な方については、近隣で電源確保が可能な場所や方法、および電源がなくてもできる代替方法を確認しておく。(電源確保だけの目的で、病院に入院できるとは限りません。特に遠方の病院に通院している方は、災害発生直後に病院までたどり着けない可能性も高いです。)
・自宅にとどまることが一番安全と考えられる方は、2〜3日間を自宅で乗り切れるだけの物資を備蓄しておく。
・近所の方との間で、支援が必要な方が住んでいることや、災害時にどんな支援が必要であるかを、普段から共有しておく。
ぜひ、今回のブログを読んでいただいたことをきっかけに、こういった具体的対策を考えていただければと思います。
もちろん、我々も、連携先の方々も、できるだけのことをしたいと考えていますが、先にも書いたとおり、我々が被災して動けない事態もあり得ます。
「誰かが何とかしてくれるだろう」ではなく、一緒に災害対策を考えていくことができればと思います。
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