今春に実施される、診療報酬改定の全貌が発表されました。
今回の改定では、全般的に在宅医療を行う医療機関に対しては厳しい対応となっています。
その中で、小児在宅医療に影響を与えそうなのは、51ページに書かれている「機能強化型在宅療養支援診療所」の条件が、この春から今までより厳しくなることです。
簡単に言うと、今までの条件では、複数の医療機関の合計として、
1)医師3名以上
2)年間の緊急往診5件以上
3)年間の在宅看取り2件以上
を満たしていれば、機能強化型として保険点数上優遇されていました。
だから、医師1名の医療機関が3つ集まって協力している場合、その合計で2)と3)を満たせばよかったのです。
それが改定によって、
1)医師3名以上→変わらず
2)年間の緊急往診5件→10件以上
3)年間の在宅看取り2件→4件以上
と、医師数以外の条件が倍に厳しくなったことに加えて、新たに、
4)すべての医療機関が最低
年間の緊急往診4件以上
年間の在宅看取り2件以上
という条件が加わりました。
この改定の意図は、だいたい理解できるものです。
つまり、1カ所(1名)の在宅医療に熱心な医療機関があれば、2)と3)の条件はそこだけでクリアできてしまいます。
今までの条件では、そこにそれほど在宅医療に力を入れていない医療機関が2カ所(2名)おぶさる形で連携してしまえば、3カ所(3名)の合計での実績しか問われないわけですから、3カ所ともが「機能強化型在宅療養支援診療所」の指定を受けることができるという、いびつな構造があったわけです。
それを、すべての医療機関に最低基準を設けたことで、おぶさり型で指定を受ける医療機関を排除しようとしていると言えるでしょう。
これはある意味で、理にかなっていると思います。
ただ、そうするのであれば、その一方でぜひ配慮してほしかった部分があります。
現在私の周りでも、小児在宅医療に関わろうとする小児科医が少しずつ増えてきているのを感じています。
ですが、今まででも、小児在宅医療の現場では、在宅看取りというのはとても難しいことです。詳細については省きますが、成人でも全死亡数の10%前後しか占めていない在宅での看取りを、小児でどれくらい行うことができるのか・・。
コンスタントに毎年2名以上ずつ在宅看取りを続ける小児科の医療機関は、おそらくごく少数でしょう。
なので、今までも、あるいはこれから始めようとしている方も、私の周りでは少なくない医師が、成人領域で在宅看取りを含めて在宅医療を実施している医療機関と連携することで、「機能強化型」の指定を受けようとしていました。
成人に比べると、ただでさえ収益性の点ではかなり落ちますので、本気で小児在宅医療をやろうと思うと、その労力に見合う報酬を得るためにはこうせざるを得ないと言えます。(もちろん、この構図が正しいわけではないのですが)
ところが、今春の改定では、従来の形では指定を受け続けられなくなることが決まりました。
つまり、どんなに小児に対して在宅医療をがんばって、臨時往診をしたとしても、在宅看取り2名以上の条件を満たせない限りは、一ランク下の評価で報酬が決まってしまいます。
診療報酬は良くも悪くも、国が今後「医療がこういう方向に向かってほしい」という意図を込めて、改定を続けられています。
医療機関はそのたびに振り回されることになるので、これ以外にも言いたいことがたくさんあるのですが、今回述べた点については、国が「小児在宅医療を充実させたい」と思っている方向性とずれた改定になっていると思うのです。
せめて在宅看取り2名以上の基準については、例えば、
「訪問患者の半数以上が小児の医療機関では免除する」
「在宅人工呼吸の小児2名以上への訪問でも可」
など、小児在宅医療への配慮がほしかったと思っています。
とはいえ、決まってしまった以上、これから2年間はこのルールに従わざるを得ません。
2年後に意見を言えるように、こちらも勉強しないといけませんね・・。
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