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小児在宅

オンライン旅日記:日本小児科学会「緊急シンポジウム」

5月11日、日本小児科学会の新型コロナウイルスに関する緊急シンポジウムがオンライン配信されました。
この内容がとても分かりやすくまとまっていて、個人的には会員限定ではなく、多くの医療職の方、子どもに関わる方に見てもらいたい内容だなと感じました。
これまでにも学会出席などの時には、旅日記として紹介をしてきましたが、今回はオンライン旅日記として、学んだ内容を紹介したいと思います。

【新型コロナウイルスの小児での特徴】
・新型コロナウイルスは、小児では症状が出にくく重症化することが少ない。また成人に比べて死亡率が低い
・しかし、1歳未満基礎疾患を有する児ではICU入院率が高い
・10代の患者でしもやけのような皮膚病変が生じることが、ヨーロッパから報告されている。
・欧米では川崎病のような症状の例が注目されている。低血圧や強い腹痛などの症状もあり、典型的な川崎病とは少し異なるようである。日本では現時点ではこのような例は報告されていない。
・他の感染症との混合感染が稀ではないため、インフルエンザなどの他の病原体が見つかったから新型コロナウイルス感染が否定的というわけではない
・小児の感染例は、ほとんどが家庭内の接触感染によると推測されている。
・小児は感染しにくいのか、感染しても軽症のために気づかないのかが不明。アメリカでこの点を明らかにする研究計画あり。
【新型コロナウイルスの国内発生の状況】
・分子疫学調査から、第一波は武漢からの持ち込みによるウイルスの広がりであったのに対して、第二波はヨーロッパから帰国した人の例と、それを発端とした国内での伝播であることが分かっている。
・5月7日までの時点で、陽性者15,382人中、10歳未満253人(1.6%)、10〜19歳356人(2.3%)重症例は10歳未満1例、10〜19歳1例で、19歳以下の死亡例はない
・国内の人工呼吸管理実施数は、4月末がピークで300件以上。ECMO管理実施数も同時期に60件以上。
・5月9日時点で、ECMOトータル154件中、離脱55%、死亡18%、継続中27%
【新型コロナウイルスと学校・保育園】
・この時点までで、国内小中学校でのクラスター発生例の報告はない。富山市の小学校で4月に報道された事例では、該当の児童や家族が校外で交流していたことから、市は学校でのクラスター発生を否定している。香川県の保育園で職員が10人以上感染した事例では、園児100人以上の中で感染は2人のみであった。
海外でも、学校や保育園でのクラスターはないか、あるとしても稀である
・小児患者から周囲への感染リスクはあまり高くないと推測されるが、そのエビデンスは今のところない。また学校や集団保育の現場でクラスターを起こして広がる可能性は、現時点では低いと推測される
・学校閉鎖で小児への感染が少なくなった可能性はあるが、他のソーシャルディスタンシングと比べて効果は少ないと考えられる。
【ワクチンの開発】
・世界でさまざまなタイプのワクチンの開発が進んでいるが、安全性、効果、投与方法(どうすれば細胞に有効にワクチンが届くのか)など、検討課題は多い。
【PCR・抗原検査・抗体検査】
PCRは感度100%の検査ではない。試薬によっても感度が異なる。
・感度70%、特異度99%と仮定すると、患者が10%の集団では、PCR陽性のうち10人に9人は新型コロナウイルス感染者であるが、患者が0.1%の集団では、PCR陽性のうち16人に1人しか新型コロナウイルス感染者がいないことになる。このため、PCRは感染の疑いが高い集団に行う必要がある
・数十分程度で判定できる抗原検査の感度はPCRより低い
迅速抗体検査は、発症から6日以内にはほとんど陽性にならないため、早期の診断には使えない。一方で、発症から2週間たてば、ほとんどの症例でIgG抗体が陽性となった。
【その他の検査など】
・小児の肺炎合併例では、軽症と比べて、リンパ球減少、プロカルシトニン高値、Dダイマー高値、CK-MB高値が認められる。
・新型コロナウイルスの子宮内感染はないわけではないが、世界的に見ても高頻度ではない。現時点では先天異常は認められていない。
生後の母子間での接触感染は起こりうるため、母が新型コロナウイルスに感染している場合には母子分離が必要。
母乳中に新型コロナウイルスが検出されやすいという報告はない。臨床上の難しさはあるが、搾母乳を与えることは可。
【小児の治療】
・軽症例が多く、基本的には対症療法か経過観察で十分な症例が多い
・ステロイドの投与は基本的に禁忌と考えられている。
アビガン、レムデシビルは基本的には小児に適応なし。プラケニル、アクテムラはある年齢以上で小児に適応あるが、副作用もあり簡単に投与できるものではない。
・成人において、レムデシビルは現時点では最も高いエビデンスがあるが、それでも効果は劇的ではない。他の薬のエビデンスも全て十分とはいえない。
・抗ウイルス薬は一般に、早期から投与する方が効果が得られやすいが、小児ではほとんどが軽症で自然治癒するため、副作用の心配の大きな薬を早期から使いづらいというジレンマがある。
【新型コロナウイルスによる直接ではない小児への影響】
環境変化に対するストレス反応には、身体症状(頭が痛い、お腹が痛い、眠れない、食欲がないなど)と、行動の変化(大人から離れない、赤ちゃん返り、攻撃的になる、遊びの変化、おもらしなど)がある。
子どものためにできること:子どもと向き合う時間を作る・日常(ルーティン)を維持する・褒めたり感謝を伝える・身体を動かす・人と人のつながりを維持する・必要十分な正しい情報を伝える
子どもに向き合う大人のセルフケアも必要:ストレス対処法を見つける・人と人のつながりを維持する
・子どもの家庭内での事故が増える可能性があり、事故予防の指導が必要。
・ネット利用が多くなるため、大人側が安全策を講じたり、ルールを作る必要性がある。ネット上の課題について、子どもと大人の間でオープンに相談できるようにする。
外出自粛に伴う子ども虐待の増加について、WHOなどは警告を発している。小児科医はいつもにも増して心を配る必要がある。

・・長い記事を最後まで読んでくださりありがとうございますm(_ _)m

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