
【開催レポート】ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ 第12回 冬を乗り切る寒さ対策の極意
在宅医療の現場で働くかがやきクリニック院長の私、南條浩輝と、脊髄損傷を患者の直野隆一郎氏が、冬の「寒さ対策」をテーマにトークを繰り広げた第12回。低体温症の医学的なリスクから、日常生活で直面する体調変化、そして当事者ならではの工夫に満ちた直野氏のインドア・アウトドアの対策まで、幅広い話で盛り上がりました。
これからの寒さを乗り切るための、具体的で実践的なお話を、在宅医療に関わるすべての方に向けてお届けします!

1. 低体温の医学的なメカニズムとリスク
今回のラジオでは、まず最も注意すべき「低体温」についての説明から始まりました。
医学的な定義では、深部体温が35度以下で軽症、32度以下で中等症、28度以下で重症の低体温症と分類されています。
しかし、一般的には32度以下の体温ってまず見ることがないですよね? ・・このレベルの体温以下になると死亡率が40%にもなり、まず入院を必要とする超緊急状態と言えると思います。
元気な人が普通に生活をしていると、ここまで低体温になることはまずありません。しかし、在宅医療においてハイリスクとなるのは、熱を作るための筋肉量が少ない高齢者や弛緩性麻痺のある方、体温調節が苦手な乳幼児や脊髄損傷の方、そして摂取カロリーが極端に不足している方などです。
特に、弛緩性麻痺の医療的ケア児では、気が付いたらすごく体温が下がっていることが時々あり、体温維持は冬場の大きな課題なんですよね。
それ以外にハイリスクなのに意外に見落とされがちなのが、大きな怪我や褥瘡(床ずれ)がある方です。
褥瘡がひどいと、傷口を治す過程でカロリーが大量に消費されるだけでなく、皮膚のバリア機能が失われた部分から熱が放出されてしまい、とても体温が下がりやすくなる場合があるのです。ただでさえ、同じ運動量でも体温を維持するために冬場は夏より多くのカロリーが消費されるため、しっかり栄養を摂ることも併せて考えないといけないんですね。
あと、水分補給も盲点になりがちです。
特に高齢者などで、冬場は尿意を避けるために水分を控えるが多いですが、血液循環を保ち末梢を冷やさないためには、温かい飲み物などで適度な水分を摂り続けることも大切です。

2. 脊髄損傷当事者が直面する寒さによる身体のリアルな変化
次に、頸髄損傷により車椅子生活を送る直野氏が、寒さで身体がどう反応するのかを説明。
直野氏作の「せきくしゃみ 顔に鼻水 目に涙」という川柳・・。
身体が不自由な方にとって、寒さで鼻水が出ても自分で拭うことができず、思わず目に涙が浮かぶ・・という状況は、単に寒くて大変というだけでなく、精神的にも凹んでしまいがちなんだそうです。・・うーん、確かに・・。
また、直野氏の場合、寒いとガタガタという震えだけでなく、全身の筋肉が硬くなり、特に首や肩甲骨周りの激しい肩こりや上腕部の筋肉痛に悩まされるんです。このあたり、我々も冬場は姿勢が悪くなって筋肉に力が入ってしまったりしがちですが、麻痺があるとそれが何十倍にも増幅されたような辛さだそうで・・。
さらに、寒さによって腸の動きが悪くなり、ガスが出にくくなったり、逆に便漏れが起きやすくなったりと、排便コントロールが不安定になるというのもよく聞くお話ですね。
しかもしかも・・冬場は洗濯物が乾きにくいため、便失禁が生活へ与える影響は大きく、それがまた精神的な落ち込みを誘発してしまう・・。
寒いだけでも何となく気分が落ちますが、それをさらに落とさないような工夫はしていきたいですね・・。
3. 直野流・インドアでの寒さ対策!
脊髄損傷の直野氏は、緊急事態に対して一人では対応できないのが、自宅で生活を送る上での大前提になっています。
それに、下半身の熱の感覚も鈍いので、火傷になっても気づけないというリスクもあるんですね。
なので、万が一を防ぐため、石油ファンヒーターなどの火気は厳禁、基本的にエアコンとセラミックヒーターを併用しています。本当は床暖房があれば理想的なんだそうですが、これはおうちの構造によりますよね・・。
また、カーテンや間仕切りを細かく活用して空間を区切って、暖房の効率を高め、電気代を抑えるように工夫しているとのこと。
それから、厚着の際の服の重みは意外に身体に負荷をかけてしまうので、直野氏はゆったりした服を重ね着する、というのを基本にして、首周りの保温のために綿マフラー、袖が邪魔にならないように袖なしのフリース(ちゃんちゃんこ)を愛用しています。
そして、夜はベッドに入る時の温度管理にも注意を払っていて、レンジで温めて繰り返し使える「ゆたぽん」を首周りやお腹に配置し、寝る1時間前から電気毛布で布団を温めて、布団に入った時に体温が下がってしまわないように工夫して・・などなどの対応で、寝付きがすごく改善するんだそうです。
ただし、感覚障害がある方の場合は、低温火傷を防ぐために直接肌に触れないようタオルで巻くなどの注意は忘れないでくださいね。

4. 「ラッパースタイル」最強説?
在宅医療を受けている方にとって、冬場の外出ってハードルを高く感じてしまいがちですよね。
直野氏も例外ではないのですが、家にこもりきりにならないよう、色々工夫しながら外出機会を確保しています。
寒い時期の外出中、こまめに身体を動かして血行を促進することを心掛け、車椅子の上でも可能な範囲で体操を行い、筋肉から熱を生み出すよう意識しているんだそうです。
服装に関しては、直野氏は「スノボウェアを活用したラッパースタイル」が最強と力説! スノボウェアは防寒・防水機能に優れ、フードが付いているため急な雨や雪にも対応できますから、確かに機能的ですね。
また、保温ポットを持参し、温かい飲み物を少しずつ摂るようにして、体温維持と水分補給を同時にクリア。
雨天時には、大きなゴミ袋とベルトを組み合わせた「エプロン兼足袋」のような防寒防水カバーを自作して、これを車椅子ごと覆ってしまうような形で活用して、ヒエヒエにならないようにするんだそうです。・・なるほどねーーー。

5. ヒートショックって??
冬は夏よりも血圧が上がりやすいことは、皆さん結構ご存じではないかと思います。
在宅患者さんでも、冬だけ高血圧の薬を飲んだり、普段の薬を増やしたりする方が結構いますよね。こういった調節のためには、血圧の記録をこまめに取り、短期的ではなくて数週間単位のトレンドを把握するのが大切です。
俗に言う「ヒートショック」は、厳密には医学用語ではないんですが、イメージしやすい言葉なので臨床現場で使われることも多くなっているように思います。
暖かい部屋から極端に寒い脱衣所へ移動し、そこからまた熱いお風呂に入る、といった急激な温度変化によって、寒くて収縮していた血管が暑くなって一気に開き、そのせいで血圧が急降下して意識を失ってしまったりするんです。
これを防ぐには、脱衣所にヒーターを置いたり、浴室の扉を開けて脱衣所まで温めておいたりするなど、環境の温度差をなくす工夫が必要です。
また、冬場は汗をかかない上に動かない、コタツでポカポカしているとトイレに行きたくない・・などで、無意識に飲水量が少なくなりやすく、これが特に高齢者などでは潜在的な脱水状態を引き起こしてしまい、さらに血圧の急降下を起こしやすくなる・・ということもあるんです。
また、最近「ととのう」とかいう言葉で流行しているサウナと水風呂の往復も、医学的に言えば血圧の乱高下を意図的に作り出すような行為であり、高齢者や高血圧のある方などにとっては非常に危険です・・。
6. Q&A ニンニクは寒さ対策になるのか?? 他
後半のQ&Aセクションでは、在宅医療現場からの幅広い疑問をいただき、なかなか面白いやりとりができました。
まず、食べ物による体温への影響については、生姜やニンニク、唐辛子などのスパイスは確かに一時的なポカポカ感をもたらしますが、医学的に低体温予防になるというわけではありません・・。何かに偏った食事よりも、美味しくバランス良くしっかり栄養を摂ることが基本ですね。
皮膚トラブルに関しては、厚着による蒸れが水虫などの原因になることがあります。直野氏の対策としては、五本指ソックスを活用して指の間の通気性を保つことや、毎日清潔なものに着替えること、そして訪問看護や介護の際に皮膚の状態をこまめにチェックしてもらうなどの照会がありました。
排便管理については、冬場は腸の運動が落ちやすいため、直野氏の場合、摘便の予定がある前夜に意識的に食物繊維を摂るなど、長年の経験からのルーチンを作っているんだそうです。
また、人工呼吸器を使用している方の場合は、外気が冷えると回路を通じて体内へ冷たい空気が送り込まれてしまうことで体温が保ちにくくなることがあり、加温加湿器の設定や管理が極めて重要となります。
7. まとめ:ちょっとした寒さ対策の積み重ね
冬はとにかく動くのが億劫で、家で縮こまった生活を送りがちですが、やはり身体を動かすこと、適度に外出をすることは、心身の状態を維持するためにはとても大切なことですね。
年間を通じて同じことをやっていると、バランスをうまく取りながら寒さを乗り越えることが難しい方も多いので、体温調節だけでなく、排便コントロールなども含めて季節に合わせた工夫を積み重ねていくことが、QOLには直結するんです。
「ちょっとだけがんばる」寒さ対策の積み重ねで、在宅生活が少しでも過ごしやすくなるように、色々な引き出しを準備しておきましょう!
ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオについて
「ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ」は、かがやきクリニック院長の南條浩輝と、頚髄損傷患者の直野隆一郎氏が、他では語れない在宅医療のディープなリアルを、お互いの立場から深く掘り下げていこうという、インターネットラジオ番組です。
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