
【開催レポート】ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ 第3回 「おしっこ」の困りごとを深掘り
前回の「うんち」に引き続き、排泄ケアシリーズ第2弾として「おしっこ(排尿)」をテーマにお送りした2024年2月の配信では、泌尿器科的症状の解説から管理デバイスの実際までを深掘り!
今回も、かがやきクリニック院長の私、南條浩輝と、頸髄損傷の患者・当事者である直野隆一郎氏が、バルーンカテーテルや膀胱瘻といった管理方法の選択や、日常生活での工夫や外出時の対策など、医療者・患者双方の視点からざっくばらんに話しています。
1. 下部尿路症状とその捉え方
在宅医療の現場において、「おしっこ」にまつわる症状の訴えはとても多く、しかも多岐にわたります。
具体的には、尿の回数が多い、急にもよおすと我慢できない、尿が出にくい、夜間に何度も起きる、尿が漏れる(失禁)、残尿感がある、排尿時に痛む、血が混じる・・などなど、本当に幅広い相談を受けますよね。
その中でもよく遭遇する頻尿は、昼間8回以上、あるいは夜間2回以上の排尿回数であることを一応の診断の目安としますが、単なる回数だけでなく、それによって本人のQOLに問題が生じているかどうかが、治療を考える上での重要なファクターとなります。
尿失禁については、急な尿意に間に合わない「切迫性尿失禁」、膀胱から尿が溢れ出す「溢流性尿失禁」、咳などで腹圧がかかる際に漏れる「腹圧性尿失禁」、脊髄損傷などで尿意がないまま膀胱が収縮する「反射性尿失禁」といった原因別分類が可能で、原因に応じた適切な対応が必要なため、単に「漏れた」ではなく、原因に迫るような評価ができる目を持っておくことが大切ですね。
2. 夜間頻尿の背後に隠れる要因と生活習慣の見直し
特に高齢者の悩みとして多い「夜間頻尿」には、内科的な要因が複雑に絡み合っている場合があります。
夜間に尿量が多くなる方の場合、原因としては水分の摂り過ぎなどの生活習慣や加齢の影響などだけでなく、糖尿病や高血圧、睡眠時無呼吸症候群といった疾患が背景にあるケースも珍しくなく、全身管理をしっかり行うことが症状改善につながるケースは少なくありません。例えば、睡眠時無呼吸症候群に対してCPAP治療を行うことで、夜間の排尿回数が劇的に改善するケースもあるんですよね。
また、寝る前のアルコールやカフェインの摂取といった嗜好品の影響も無視できません。
症状があるからといってすぐに薬を処方するのではなく、まずは排尿記録をつけ、水分摂取のタイミングや生活習慣で見直せる点がないかを俯瞰してみることや、基礎疾患の影響にも目を配ることなどが、患者さんを総合的に診療する在宅医療においてはとても大切ですね。
3. 排尿管理デバイスの選択肢:バルーンカテーテル・自己導尿・膀胱瘻
自力排尿が困難な場合の管理方法の主なものとして、バルーンカテーテル留置、間欠自己導尿、膀胱瘻の3つがあります。
バルーンカテーテルは介護負担が少なく一般的ですが、常に管が入っていることによる生活の制限や、尿路感染症のリスク、特に男性では尿道の損傷が起きやすいといったデメリットも存在します。
対して自己導尿は、膀胱機能を維持しやすく、感染リスクも比較的低いとされますが、頻回の操作が必要で、身体機能によっては自力での実施が困難な方も多いのが悩ましいところです。
直野氏は入院中、これら全ての選択肢を提示された上で、脊髄損傷により指の機能に制限があることや、社会生活での利便性を考慮し、最終的には膀胱瘻を選択しました。こういった方針は医師が一方的に決めるのではなく、患者自身が「どのような生活を送りたいか」という意向に基づいて能動的に選択できるように、メリットデメリットをしっかり我々も把握しておき、一緒に考えていく必要がありますね。
4. 膀胱洗浄:ガイドラインと現場の折衷案
長期にわたってカテーテルを留置していると、尿中の浮遊物や結晶(尿砂)による閉塞が問題になる場合があります。
膀胱洗浄の是非については悩ましい問題です。ガイドラインでは「感染予防目的の定期的な洗浄」は推奨されていません。しかし、尿の濁りによって頻繁に閉塞を繰り返し、解除目的での洗浄をせざるを得ない場面には、在宅医療では数多く遭遇しますよね。
また、尿が濃縮してアルカリ化すると結晶ができやすいため、酸性に保つような飲み物を工夫したりすることもあります。
直野氏の場合、医師の指導のもと1日2.5〜3リットルの水分を摂取し、自衛手段として1日1回の洗浄を継続しています。ガイドラインでは推奨されていなくとも、現場でうまくいっていればそれでいい、という柔軟さも時には必要なんですよね・・。
5. 外出を支える知恵:蓄尿バッグの工夫とコスト管理
おしっこの管理のために外出に困ってしまうことにならないように、いろいろ工夫できることがあります。
直野氏は、外出時にはズボンの下に隠せる「レッグパック(足に装着する蓄尿バッグ)」を使用し、その固定には100円均一のマジックテープを活用しています。また、カテーテルの接続部分による擦れや、管の屈曲(折れ曲がり)による自律神経過反射(頭痛や血圧上昇など)を防ぐため、管にガーゼを巻いて保護するといった細やかな工夫を重ねています。
さらに、毎日の管理のために介護負担が大きくなりすぎないように、また経済的に負担がかからないようにすることも重要です。直野氏からは、汚れた時の大変さを考えると、高価なパンツを洗って再利用するよりも、安いものを使い捨てにするという、当事者ならではの工夫のお話もありました。
さらには、保険診療でカバーできる物品には限りがあるため、市販で手に入るものを活用して、いかに安価で持続可能な管理体制を作るかという視点も必要ですね。
6. 質疑応答の振り返り
Q&Aでは、排泄の失敗への配慮について、直野氏が語りました。失敗を特別な出来事と捉えずに、「ああ、漏れちゃったねー、というくらいにライトに接してもらえること」が救いになると・・。なるほど。
例えば、「おしっこが出て良かったね」といった肯定的な捉え方や、日常の一コマとしてさらりと処理する看護師の余裕などが、心理的な面へ大きく作用するんですね。
また、尿バッグが真紫色になる「紫色尿バッグ症候群」への質問もあり、これは便秘が引き金になっていることを説明しました。
7. まとめ:在宅排尿ケアのポイント
・下部尿路症状の背後にある生活習慣や基礎疾患を念頭におく
排尿トラブルには泌尿器科以外の要因が隠れていることもあり、多角的な評価ができるようになろう!
・QOLを考慮して管理デバイスを選択する
バルーン、自己導尿、膀胱瘻にはそれぞれメリット・デメリットがあり、身体機能だけでなく「どのような社会生活を営みたいか」を軸に患者と共に選択する!
・現場の知恵と安価なアイテムで継続性を高める
100均アイテムの活用、使い捨ての割り切りなど、介護負担とコストを抑える工夫を!
・排泄の失敗には軽く明るく
心理的なケアとして、失敗を否定せず、日常の当たり前のこととして接する姿勢が、本人の自尊心と外出へのモチベーションを守ります!
ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオについて
「ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ」は、かがやきクリニック院長の南條浩輝と、頚髄損傷患者の直野隆一郎氏が、他では語れない在宅医療のディープなリアルを、お互いの立場から深く掘り下げていこうという、インターネットラジオ番組です。
現在、生放送・アーカイブともに、YouTubeで配信中です。
共感いただけるようでしたら、YouTubeのチャンネル登録と「いいね」をお願いいたします。
配信情報は、決まり次第、SNSでお伝えしています。
こちらも、ぜひフォローとチェックをいただければ幸いです。
● 各SNS「zaitaku__radio」(アンダーバーは2つ)
https://x.com/zaitaku__radio
https://www.instagram.com/zaitaku__radio
YouTubeでの動画アーカイブ
/div>



コメント