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ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ

ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ 第2回「うんち:1」

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【開催レポート】ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ 第2回 「うんち」のリアルと工夫を語り尽くす

2024年1月にお送りした第2回のテーマは「うんち(排泄)」。
かがやきクリニック院長の私、南條からは、便の性状を評価するツール「ブリストル便性状スケール」や、人間の機能が複雑に絡み合って排便ができるに至ること、などを説明。
頚髄損傷患者の直野隆一郎氏からは、新聞紙を用いた「土手」作りや排泄時の姿勢、食事への注意などの日常的な工夫から、患者側の切実な「排泄とメンタル」の関係や、介護者の関わり方へのお願いなど、幅広い話題に迫ります。
 

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1. 排泄という行為の複雑さと共通言語の重要性

排泄の状況を適切に評価して共有するためには、まず「便の状態」を共通の言葉で語れないと始まりませんね。
「ブリストル便性状スケール」はそのための便利なツールです。1(コロコロ便)から7(水様便)までの7段階で状態を共有すると、患者さんが言われる「普通の便」や「下痢」という主観の入った言葉ではなく、客観的な情報共有が可能です(患者さんごとに「普通の便」「下痢」などの表現は結構主観的で、医療従事者がイメージするものと乖離があることも珍しくないんですよね)。
また、排泄は単に便を出すだけではなく、便意の感知、トイレへの移動、衣服の着脱、後始末といった多くの過程が組み合わさった非常に複雑な行動であることは、しっかり押さえておくといいですね。
在宅医療では、この過程のどこに支障があって、排便が難しくなっているのかを見極めることが、生活のしやすさを改善できるか否かに直接的につながります。

2. 便秘薬の選択と在宅ならではの調整術

便秘薬には、酸化マグネシウムのように便を軟らかくするものや、ピコスルファートNa(ラキソベロン)のように腸を刺激するものなど、様々な種類があります。最近ではマクロゴール4000(モビコール)やリナクロチド(リンゼス)といった新しい薬も登場しており、選択肢は広がりました(それぞれの薬剤の特徴については本編で述べていますので、ぜひそちらをご覧くださいね)。
直野氏の場合、排便予定の前夜にラキソベロンを内服し、当日の朝に座薬や浣腸を併用することで、安定した排便リズムを確立しています。単に便を出すだけでなく、介護者の負担を考慮して狙ったタイミングで出せるようにすることも、在宅医療においては重要な視点です。・・とはいえ、これがなかなか難しいのも事実ですが・・。
また、通常は眠前で処方する便秘薬であっても、患者さんや家族の生活リズムなどを考慮して朝に内服して夕方に排便するような調整を行うなど、柔軟な対応がQOLに直結することがよくありますね。

3. 実践的ハック:新聞紙で作る「土手」と排便姿勢

在宅ならではの工夫の一つが、直野氏の紹介する「土手」です。防水シートやビニールの下に、ガムテープで固めた新聞紙の土手を設置し、お尻の下に傾斜をつけることで、浣腸液や軟らかい便が周囲に広がらず、1カ所のビニール袋に集まるよう工夫されています。
また、排便時の姿勢はとても重要で、解剖学的には膝を曲げ込んでお尻を突き出すようなしゃがむ姿勢が最も排便しやすいのですが、ベッド上では仰臥位で身体がまっすぐのままで排便しようとする方も少なくありません。ベッド上でも意図的にしゃがむような姿勢を側臥位で取ることで、スムーズな排便ができることも多いので、試してみてください。
また、洋式トイレを使用する場合でも、足台を置いて膝の位置を高くするだけで、しゃがむ姿勢に近づいて、排便のしやすさが劇的に変わることがあります。特に背の低い子どもや小柄な高齢者の方などで、足の裏が床に付かない場合には、ぜひ足台を置いてみてください。

4. 排便コントロールのための食生活とライフスタイル

日々の生活習慣は便の性状や排便のしやすさに直結します。中でも食生活は影響がとても大きいんですよね。
直野氏は体格が大きいこともあり、1日に2.5〜3Lの水分摂取を心がけています。特に冬場は飲水量が減り、便が硬くなる原因になるので、普段から意識をするようにしています。
食事面では、個人個人で差はあるものの、食べ物が排便に与える影響を把握して注意を払っておくと、コントロールがしやすくなることが多いです。例えば、意図的におならができない直野氏の場合、サツマイモやゴボウ、ニンニクなどはガスを発生させやすいため、そのガスが座薬のような刺激となって予期せぬ便失禁を誘発してしまいます。また、油っぽい食べ物や辛い食べ物も便が緩くなる原因となりやすいので、「明日はいつ便が出ても大丈夫」という日にだけ解禁しているそうですよ。
週に数回の排便リズムをつけている直野氏の場合には、1〜2泊程度の旅行や出張などの際には、外出中には排便しない前提でスケジュールを組み、それに合わせて食事のタイミングや内容を調整するといった、経験に基づいた自己管理術を編み出しています。しかしこれらのコントロールを身につけるまでには、トライアンドエラーを繰り返して数年かかったそうです。なかなか一筋縄ではいかないのが排便コントロールなので、気長にゆっくり患者さんと一緒に考えていく姿勢が大切ですね。

5. メンタルケア:自尊心と周囲の声かけ

排便管理において最も見落とされがちで、かつ重要なのが、患者さんのメンタル面への配慮です。
「自分のケツを拭けない」という言葉は、障害のために本当にそれができない直野氏にとって象徴的であるというお話があり、これにはとても考えさせられました。
排泄の失敗は、本人の自尊心を深く傷つけ、精神的な落ち込みを招きます。もし介護者が溜息をついたり、ネガティブな反応を示したりすれば、本人は「もう漏らしてはいけない」と水分摂取を極端に控えたりして、それが便秘を悪化させるという悪循環に陥ることも考えられますよね。
直野氏によると、医療従事者や家族には、たとえ失敗があっても「出たことは良いことだ」と明るく振る舞い、ポジティブなフィードバックを行ってくれると嬉しいとのこと。我々にはこういう側面への配慮も求められています。

6. 質疑応答の振り返り

Q&Aセッションでは、多くの視聴者から切実な質問が寄せられました。
直野氏は、最初から完璧な排便コントロールを目指すのではなく、1年程度のスパンで季節や食事による変化を観察しながら、自分なりの「落とし所」を見つける心の余裕を持つことが大切だと言っています。医療職はすぐに薬で解決したくなってしまいますが、それくらい気長な付き合いが求められるということですね。
また、人工肛門(ストーマ)の患者さんの場合は、皮膚への影響や処理の簡便さを考慮し、あえて少し便を固めにコントロールする場合があるなど、個別の患者さんの状況に応じた配慮をすることもあります。エビデンスも重要ですが、何より「本人が困っていないか」「生活の質が保たれているか」を基準に、多職種で情報共有しつつ、工夫を重ねていくことが大切ですね。

7. まとめ:「出す」ことと「尊厳」を支えること

排便コントロールの本質は、単に便を出すという医療的な処置に留まらず、患者さんの日々の生活と自尊心を支えること。
ブリストル便性状スケールなどを用いた的確な評価、生活リズムに合わせた薬の調整、そして「土手」のような現場の知恵を組み合わせることで、患者さんのQOL向上をみんなで目指していきましょう!
失敗を笑い飛ばせるような明るい関係性と、本人がリラックスできる環境づくりは、排便コントロールに関わる多職種の意識ひとつかと思います。

ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオについて

「ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ」は、かがやきクリニック院長の南條浩輝と、頚髄損傷患者の直野隆一郎氏が、他では語れない在宅医療のディープなリアルを、お互いの立場から深く掘り下げていこうという、インターネットラジオ番組です。
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