まず、この記事に書かせてもらっている患者様のご冥福をお祈りさせて頂きます。
そして、誤解のないように書かせてもらいますが、これはあくまで警察、検察、行政、果ては日本の世論について異を唱えているのであって、患者様の関係者の方々に異を唱えているのではありません。
最近医療事故絡みの報道が後を絶たない。
事の発端は、福島の産婦人科で起きたこの産婦人科逮捕劇。
ご存じの方も多いだろうが、「癒着胎盤」という合併症を先見できず、妊婦さんを救うことができなかったのが業務上過失致死罪に問われている。

でも、こんなことされてたら医療は成り立たないって事をみんなわからないんだろうか・・。
難しい症例に立ち向かったら、それは時には残念な結果になることもある。
癒着胎盤での大量出血なんて、産婦人科の経験がかなり豊富な医者でもみんな経験のあるものではない。
事実、報道や、病院同僚の先生方のネットへの書き込みなどを見ると、この医師はできる限りのことを行い、全力を尽くしたが残念な結果となったようであり、それまでの医療にいろいろ問題のあった方ではないと受け取れる。
そんな先生が僻地で一人難しい症例に立ち向かい、孤軍奮闘もむなしく残念な結果になった。
これをなぜ「刑事罰」を以て責めなくてはいけないのか理解できない。

今回のようなことでいちいち刑事罰を恐れていたら、医療は機能しなくなる。
事実これに対し、福島県の産婦人科は、一人では(今の警察と世論が納得するような)一定のレベルの医療を行えないとして、一人の医師のみで診療していた病院から医師を引き上げた。
結果として、産婦人科のない地域がものすごく増えてしまった。
これは結局、地域の人にとってプラスなのか?

今回の事例が業務上過失致死に問われるとしたら、極端な話、

1.ルート確保の難しい乳児に1回で成功せず、何回も留置針を刺した・・・業務上過失傷害容疑??
2.気道確保の難しい呼吸障害の患者さんに挿管する際、喉頭鏡で歯を折ってしまった・・・業務上過失傷害容疑??
3.心マッサージを行い蘇生中に、肋骨を折ってしまった・・・業務上過失傷害容疑??

医療に関わるマイナスな事象がすべて医師の罪に問われてしまいかねない。
そんな不安の中、誰が難しい治療、難しい処置を行うというのか?

医療について、履き違えないでほしいのは、どんなに「安全」と思われている医療でも「100%の安全」なんてあり得ないということである。
お産もそうだし、点滴ひとつだって、血管の外にもれて周囲が壊死してしまうこともある。
そんなの全てを「罪」に問うという今の風潮はどうなのか。
警察、検察、マスコミ、世論、みんな日本の医療にどうなってほしいのか。

このままでは、日本の医療は本当に崩壊する。
「今までの医療の『臭いものに蓋をする』慣習にメスを入れる」などと言うが、本当に悪質なところをひとつも突けていない。
善良な一生懸命医療に当たっている医師を捕まえて、何が改善されるというのだろう。。。