今週末、大阪市中央公会堂で、日本小児科医会の総会総会フォーラムが開催されました。
その一部として、8日午前にミニシンポジウム
「在宅小児医療の実際と将来展望」
が開かれ、私も出席してきました。
事前の企画会議には、私も少し入らせていただいていました。
今回特徴的であったのは、小児在宅医療に小児科開業医がどのように関わるかが主な論点となっていて、実際に関わっている小児科開業医の先生方が、実例を交えてその方法を提案されていたことです。
小児在宅医療についての勉強会は、これまでに数多く開かれてきました。
私がこれまで出席したことがあるのは、どちらかというとパイオニア的に小児在宅医療を実践している医師や訪問看護師などコメディカルの方、あるいは病院の小児科医のお話が多く、外来メインの小児科開業医の取り組みが中心の勉強会の経験はありませんでした。
6名のシンポジストの先生からいろんなお話がありました。とても多岐にわたる内容だったので、特にポイントだと思ったことを以下に挙げてみようと思います。
1)小児科開業医が小児在宅医療に関わっていくために
小児科開業医が、それぞれ無理のない範囲で1~2人にだけでも在宅医療に関わってくれれば、全体として活性化させることができるかもしれない。
大阪府下の全小児科開業医にアンケートを取ったところ、回収率約20%で、依然小児科開業医の中での認知度の低さがうかがえる。
しかし、条件付き(例えば開院時間中のみの対応なら可能、など)も含めると、70名以上の医師が「小児在宅医療に関わってもよい」と答えている。
在宅医療未経験で、「小児在宅医療に関わってもよい」と答えた医師の多くが「今までに在宅医療の相談を受けたことがない」と答えており、ニーズとのミスマッチが存在する。
大阪小児科医会では、このミスマッチを埋める方法を検討している。
2)2人の小児科開業医が関わった例
在宅人工呼吸で退院する子どもへの訪問診療を、在宅医療経験者と未経験者の小児科開業医2人で実施した例の報告。
退院前カンファレンスへの参加や、訪問看護との連携など、在宅医療のコーディネートを経験者が未経験者に伝えながら開始。
1,3,5週目をA医院、2,4週目をB医院の医師が担当すると決め、訪問診療と臨時対応を当番制にすることで、未経験者の不慣れな部分のサポートと両者の負担軽減とを実現した。
情報の分断を防ぐため、訪問看護ステーションや病院医師を含めて、毎週メールで情報交換して状態を把握できるようにしていた。
3)在宅医療の診療報酬の問題点
小児科開業医の7割以上が「小児科外来診療料」という保険診療制度を使っている。
「小児科外来診療料」算定医療機関は、訪問診療や往診の診療報酬を保険請求することができないというルールが存在するため、自宅まで出向いているのに外来で診察したのと同じ診療報酬になってしまう。
在宅医療に関わる小児科開業医を増やすためには、「小児科外来診療料」算定医療機関でも在宅医療関連の診療報酬を請求できるように制度改正が必要。
【感想】
企画段階から「土曜日の午前で人が集まらないのでは?」と心配していましたが、想像していたより多くの方に参加いただき、総合討論でも時間切れになるくらい質問がたくさん出て、活発な議論がありました。
今回のミニシンポは、小児科開業医の目線からの話がほとんどでした。
実際には小児科開業医以外に、成人領域の在宅医療を行っている医師にも小児在宅医療に目を向けてくれている方が増えています。
議論でも少し触れられていたこととして、成人領域の在宅医と小児科医がどう協力していけばいいのか、これは今後の大きな課題であると感じます。
成人領域の在宅医と小児科医のそれぞれの学会や勉強会などでは、小児在宅医療が取り上げられる機会は増えているものの、現状では、両者が揃って話し合う機会はほとんどありません。
私は、小児科開業医が在宅医療に関わるのも、成人領域の在宅医が小児に関わるのも、どちらにもメリットと弱点があると思っています。
それらがうまく補完しあえるような形を作っていくことができれば・・と、今はまだ机上の論理どころか脳内の妄想でしかありませんが、色んなことを考えている毎日です。
そして、小児科開業医目線での報告は今まで珍しかったこともあり、今回取り上げられた診療報酬上の矛盾点についてはおそらくあまり知られていないことだと思います。
もちろんお金が全てではありませんが、「小児科外来診療料」算定医療機関でも在宅医療関連の診療報酬を算定可能とする改正は、ぜひとも早期に実現してほしいと思います。
まだまだ書き足りませんが・・。
皆さんのご意見をいただければ幸いです。
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