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小児在宅

旅日記・日本未熟児新生児学会

11月30日~12月2日に金沢で開催された、日本未熟児新生児学会に参加してきました。
この学会は毎年、日本新生児看護学会と同時期・同一会場で開催され、両方に参加することができます。
また、医師と看護師の合同シンポジウムもあり、なかなか議論の面白い学会なんです。

さて今回の学会、私は、
当クリニックにおける小児科領域患者の訪問診療と往診に関する検討
という演題を出させていただきました。
月曜日の朝一番のセッションにもかかわらず、意外にも大勢の方に聴いていただけて感謝しています。

今回の演題で言いたかったことをまとめると、以下の3点になります。

1)小児の訪問診療ニーズは、NICUや小児科病棟の退院支援時だけではなく、すでに在宅生活中の子どもにも存在する。

2)必ずしも医療依存度の高い子どもだけが通院困難なわけではなく、訪問診療の対象には医療依存度の低い子どもも含まれる。

3)訪問看護ステーションや他の医療機関との連携や、診療の工夫により、24時間対応への医師の負担を軽減することが可能。

(1)

開業からの1年間で訪問診療を開始した子どもの患者さんは33人ですが、そのうち病院の先生からの相談を受けたのは11人で、訪問看護師または保健師からの相談が10人、家族からの相談が12人と、ほとんど1/3ずつを占めていました。
この結果が意味することは何でしょうか。

病院の先生が在宅医療、特に訪問診療の導入を考えるのは、長期入院している子どもをどうやったら安全に退院させてあげることができるか、これが理由となっていることがほとんどです。
逆に言えば、すでに(ある程度)安全に退院できている子どもに対して、訪問診療の導入を考えることはほとんどないということです。

しかし、実際には、すでに退院している中にも、通院が大変で困っている子どもは大勢いるのです。
また、基礎疾患のフォローを受けている大病院以外にかかりつけ医を持っていない子どもも多く、そういう子どものお母さんからは、ちょっとしたことを相談できるかかりつけ医として訪問診療をして欲しいという希望もよく聞きます。
こういったニーズへの対応をどうするか、この点についてはまた機会があれば書きたいと思います。

(2)

私は病院勤務時代、医療依存度の高い子どもほど通院が困難だと思っていましたが、医療依存度が低くても通院が困難な子どもは大勢います。
例えば、基礎疾患のフォローを受けている大病院が遠方の場合、自家用車を持っていないだけでも、1人で歩けない体格の大きな子どもを通院させるのは大変なことです。
あるいは、頻繁に吸引を必要とする子どもでは、自家用車での移動中にも吸引のための人手がいりますから、お母さんだけで通院するのは無理なため、何度もお父さんが仕事を休まなければならない場合もあります。

こういう子どもたちはみな「通院困難」なのですが、1)でも書いたとおり、病院の先生からはなかなかその実態が把握しづらいと思います。
そのため、訪問看護師や保健師、あるいはご家族から直接の訪問診療の依頼が多い結果となっていると考えられます。

(3)

開業以来、子どもの患者さんの訪問診療は徐々に増えてきていますが、実はこの1年間で、夜間休日の臨時往診の回数は思ったほど増えていません。
これにはいくつか理由があると考えています。

その一つには、連携先の訪問看護師さんとのコミュニケーションが深まったこと、また訪問看護師さんが子どもに慣れてきてくれたことで、夜間休日を含む臨時対応について、訪問看護師さんだけで解決してくれることが増えてきたことがあります。
例えば、今までなら嘔吐するたびに臨時往診の依頼があった子どもでも、訪問看護師さんとの間で「こういう場合には注入量を減らして、こういう場合には栄養剤を薄めて対応する」
というような相談を繰り返して行うことで、必ずしも医師が往診しなくても解決する問題が増えてくるのです。

話は少しそれますが、小児の訪問診療の受け皿がなかなか増えない一つの理由には、24時間365日対応への負担を敬遠する医師が多いことが挙げられます。
訪問看護ステーションの協力を得ることは、この点の解決に向かう大きな一歩となり得ます。
何より、この1年と少し、ほとんど私1人でクリニックの夜間休日対応をして何とかなっていたのには、訪問看護師さんの協力による部分がとても大きいのです。

(1)から(3)を通じて何が一番言いたいかというと・・

小児在宅医療は、医療依存度のとても高い子ども「だけ」が対象と思われているふしがあり、多くの医師から、「大変すぎて手が出せない」と思われているところがあります。
しかし、訪問診療のニーズを持つ子どもの中には、そこまで医療依存度の高くない子どももいますから、まずはそういう子どものかかりつけ医として機能することを考えてくれる医師が増えれば、それでも多くの子どもが恩恵を受けられます
それに、そういうところから小児在宅医療に参画してくださった先生が、少しずつ医療依存度の高い子どもにも対応してくれるようになれば、裾野は広がるかもしれません。

また、医療依存度が高い子どもであったとしても、医師にかかる臨時往診への負担軽減は、工夫や連携次第で可能です。

こういったノウハウを知ってもらうことで、小児在宅医療の入り口で多くの医師が感じているハードルを少しでも下げ、「これくらいなら自分でもできる」と思ってくださる先生が増えれば・・と考えているのです。

小児在宅医療の未来を考えるとき、少しでも多くの医師・看護師・その他の職種の方に、少しずつでもいいから関わってもらうことが大事だと思っています。
そのためには、埋もれている訪問診療ニーズに誰かが気がついて、新しい先生や訪問看護師さんには少し医療依存度の低めの患者さんから関わってもらう、ということを考えても良いのではないかと思うのです。病院の先生には、そういう視点でも小児在宅医療をとらえてもらえたらな・・との思いで発表させていただきました。

また、私自身のこととしては、
「何だ、南條ってこの程度のことしかしてないのか。これなら自分にもできそうだ。」
と思ってもらえるような仕事の形を作って、発信していきたいな・・と思っています。

今回の発表内容は多分に医師目線からのもののため、患者さんやご家族の方が読まれると少し不快に思われる表現や内容が含まれているかもしれません。その点についてはどうかご容赦ください。

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