
【開催レポート】ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ 第4回 嚥下のリアルと工夫を語る
第4回目となる今回のテーマは「嚥下」。
頸髄損傷により四肢麻痺となった直野隆一郎氏の壮絶なリハビリ体験記から、私、南條が医師として解説する誤嚥のメカニズム、そして日常生活で明日から使える具体的な工夫まで、幅広く語り合いました。
「食べる楽しみ」をどう守るか、在宅医療の現場における「食」のリアルな課題に迫ります!
1. リハビリの軌跡と「食べる」ことへの執念
直野氏は海での事故による頸髄損傷の後、約1ヶ月間は意識不明で、意識が戻るやいなや過酷な嚥下訓練が始まりました。
最初は上体を起こすことから始まり、舌や顎を動かす運動、さらには「食べ物を見る」だけという訓練を繰り返しました。この訓練は実は、視覚刺激によって脳に唾液の分泌を促す反応を起こさせるという、重要なプロセスだったんだそうです。
ようやく許可が出た「とろみ付きのお吸い物」を口にした時の感動は、人生で一番の美味しさだったと直野氏は振り返ります。
このエピソードは、「食べる」ことが単なる栄養補給ではなく、生きることにいかに大切な要素であるかを物語っていますよね。
2. 誤嚥のメカニズムと「静かなる脅威」
南條は医師の立場から、摂食と嚥下の段階と、誤嚥の分類について概説しました。
誤嚥には、飲み込む前に液体などが流れ込む「嚥下前誤嚥」、飲み込む瞬間の「嚥下中誤嚥」、飲み込んだ後に残った物が気道に入る「嚥下後誤嚥」があります。
そして、見逃されがちでありながらとても重要なのは、咳き込みなどの反応が出ないまま、知らぬ間に唾液などが気道に入ってしまう「不顕性誤嚥」です。実は、高齢者などで問題になる誤嚥性肺炎の原因の多くはこの「不顕性誤嚥」なので、たとえ食事を止めて胃瘻からの注入だけにしていても、自分の唾液で肺炎を起こすリスクがあるのです。
3. 注意すべき「意外な食品」とその理由
一般的に「飲み込むのが危ない」とされる、お餅やこんにゃくなどだけでなく、嚥下が難しい食べ物はいっぱいあります。
直野氏の実体験では、パサパサしたきな粉や、口腔内の水分を吸ってしまうパン、口に張り付く海苔などが、要注意リストに挙がりました。
南條からは、一般の方にはイメージしにくい高野豆腐やスイカなどの危険性を指摘しました。これらは口の中で固形物と液体に分離してしまうため、2つの異なる形態の処理を口の中で同時に行わなければならず、この処理の難易度が非常に高いため誤嚥を招きやすいのです。
4. 当事者が語る「食事介助」の極意
直野氏が介助を受ける側として、スプーンやコップは口に対して垂直に差し出すようにリクエストをするそうです。顔の横から持ってこられるよりも、面積の少ない先端から垂直に口に入る方が、食べやすく、食べこぼしも減るということなんですね。
また、介助中はテレビなどに気を取られず、アイコンタクトを大切に集中してほしいというお話もありました。
さらに、ストローで飲んでいる最中には角度を変えずに固定してほしいこと、ふやけにくいプラスチック製ストローが使いやすいことなどは、言われてみるとハッとするところです。近年ストローは紙製のものが増えていますが、こういったニーズあるんですね・・。
5. 進化する介護食と「食の楽しみ」
ミキサー食は栄養面で優れていますが、見た目が白っぽくなることや、例えば青魚などでは元の料理の風味がネガティブに強調されることがあります。
これを解決する手段として、見た目は常食に近いまま舌で崩せる「あいーと」などの市販の介護食品や、家庭料理を柔らかく加工する「デリソフター」という家電製品を紹介しました。
また、食事を楽しむ力を付けるために、日常生活でできるトレーニングとして、大きな声を出すことや、歌を歌うことで、喉の周囲の筋肉や呼吸筋を鍛えることも、非常に有効です。よく介護施設などで行われる、カラオケや、声を出すレクリエーションは、日常的に実施できる理にかなったリハビリと言えますよね。
また、人とおしゃべりをして口を動かすこと自体が、嚥下機能を維持するための強力なトレーニングになります。一人で家にこもりがちな高齢者の方にお出かけしてもらうことは、実は嚥下機能にも大きな影響を及ぼすんです。
6. 質疑応答の振り返り
質問コーナーでは、薬剤師の方から内服薬の工夫についてご質問をいただきました。
錠剤を水で飲むのは、高野豆腐と同様に固形と液体の混合であり、誤嚥のリスクが高い状態になるんです。服薬ゼリーの活用や、口の中で溶けるOD錠への変更、さらには錠剤を砕いてゼリーに混ぜるなどの工夫を提案してもらうことは、嚥下機能に配慮した有効な服薬指導だと思います。
また、口腔内を清潔に保つことは、唾液を誤嚥しても肺に入る細菌の数を減らすことができるため、誤嚥性肺炎のリスク減に直結します。近年口腔ケアの重要性は広く浸透してきましたし、これは本当に強調しておきたいところです。
7. まとめ:嚥下のリアルと工夫
・「食べる」は単なる栄養補給ではない!
生命維持だけのためだけではなく、生活の楽しみの大きな要素の一つであり、時に精神的な支えにもなり得ます。
・誤嚥のメカニズムへの理解を深めよう!
食事形態と嚥下の難易度との関係や、不顕性誤嚥とその予防や対策などは要チェック。
・介助は「集中」と「本人に合わせたもの」で!
当事者の視点に立った具体的な介助のために、ちょっとしたことへも気配りを。
・リハビリと口腔ケアはめっちゃ大切!
介護食の活用や、歌を歌うなどの訓練、そして口腔ケアを組み合わせることで、誤嚥性肺炎を予防しましょう!
ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオについて
「ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ」は、かがやきクリニック院長の南條浩輝と、頚髄損傷患者の直野隆一郎氏が、他では語れない在宅医療のディープなリアルを、お互いの立場から深く掘り下げていこうという、インターネットラジオ番組です。
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