
【開催レポート】ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ 第11回 風邪の正体と在宅での予防と対策
最近は10月11月もまだまだ暑い日が多いですが、それでも寒暖差が出てくると「風邪」での往診が増えてきます・・。
かがやきクリニック院長の私、南條浩輝からは、風邪の医学的な定義や原因ウイルスの特徴、そして頚髄損傷を持つ直野氏にとっては命を守るためと言っても過言ではない風邪の予防策について、詳しくお話ししています。

1. 「風邪」の医学的な定義と正体を正しく知る
「風邪」は医学的には「かぜ症候群」と呼ばれ、鼻からのどにかけての上気道の急性炎症によって生じる疾患と定義されています。
原因の80〜90%はウイルス性であり、基本的にウイルスには抗生物質が効きません。ですので、実は現代医学でも風邪に対する特効薬というものは存在しないんですよね。(ウイルスの中にも、抗ウイルス薬が存在するインフルエンザや新型コロナウイルスなどもありますが、これらはむしろ例外です)
私たちが医療現場で処方する「風邪薬」は、あくまで咳を止めたり熱を下げたり、症状を楽にするのためのものであり、飲まないと治らないわけではないんです。最終的には自身の免疫の力で治しているんですよね。
ただし、溶連菌感染症などの細菌の感染が明確な場合などでは、抗生物質の投与が必要な場合もあります。
よく、「風邪が長引くから抗生物質を処方してほしい」と患者さん、あるいは訪問看護師さんやヘルパーさんなどの支援者の方から言われることがありますが、むやみに投与せずに必要な時にしっかり使うという対応が、耐性菌の問題などの回避のためにはとても大切なことをしっかり説明していく必要がありますね。

2. 「ただの風邪」から「致命的リスク」に・・
一般的に風邪はよくある軽い病気ですが、在宅医療の対象となる患者さんではそうは言っていられないことが結構あります。
頚髄損傷患者の直野氏にとっても、受傷前には風邪は特に怖いものではなかったのですが、現在は「命に関わるもの」という警戒心を持っているんです。
その理由は、呼吸筋の麻痺によって、肺活量が減少していたり、痰を出すための力強い咳ができないこと・・つまり、風邪による呼吸苦の症状が強く出たり、肺炎などに悪化していくリスクがとても高い状態なんです。
しんどいなあ・・とベッドなどに横になると、重力の影響で腹部の臓器が押し上げられて肺が圧迫され、ただでさえ浅い呼吸がさらに苦しくなることもあります。
そして、痰が喉に詰まるような感覚に襲われ、窒息するような恐怖を感じることも・・。
在宅医療の現場では、たかが風邪、というわけにはいかず、これがコロナ禍の当時には特に悩みのタネでした・・。

3. 風邪の原因と特徴
風邪の原因となるウイルスには多くの種類があり、ライノウイルス、エンテロウイルス、コロナウイルス(旧型)などが大半を占め、これらには迅速検査が存在しませんので、「風邪」としてひとくくりにされていて、原因のウイルスまで突き止められるのは非常に限られたシチュエーションでの特殊な検査をした時のみなんです。
迅速検査が可能なウイルスの中でもRSウイルスでは、乳幼児では気管支炎は肺炎などへの重症化を起こしやすいばかりではなく、無呼吸を起こしやすいという特徴があり、時にいのちに関わることもあるため、流行時には本当に神経を使います。
最近では妊婦向けのワクチンが登場して、お腹の中の赤ちゃんへお母さんから抗体を届けることができるようになり、これは生まれたての赤ちゃんを守る強い味方になると期待されています。
また、マイコプラズマは肺炎になりやすい特徴がある一方で、迅速検査の精度が低く診断が遅れやすいという、臨床現場での難しさがあります。特にここ数年ではクラリスロマイシンなどの従来の抗生剤が効きにくい耐性の問題も深刻化しており、在宅医療現場ではなかなか対応が難しい感染源の一つです。
子どもによく見られる溶連菌感染症は、いわゆる「風邪」の中ではめずらしく、抗生物質をきっちり内服すべき病気です。

4. 直野流「先手必勝」予防作戦
直野氏はとにかく風邪を引きたくない・・この点については徹底しているので、手洗い、うがい、マスクといった基本的な感染予防策はもちろん、部屋の換気や加湿など、できることは全部と言っていいくらいの対策を施しています。
また、普段の外出機会は直野氏本人より家族の方が圧倒的に多いので、同居する家族にも可能な限りの予防策を徹底してもらうことが、外部からのウイルス持ち込みを防ぐ最大の防御になりますよね。
そして、「今日は少し体がだるい」「喉がイガイガする」といった、いつもと違う予兆を感じたら、すぐに身体を休めて悪化しないように努める・・これが直野流「先手必勝」予防策!
昭和の頃のように無理をして働くのではなく、不調を感じたら早めに休み、マイナス要因を最小限に抑えることが、結果として回復を早め、重症化を未然に防ぐことにつながる・・当たり前ではあるのですが、ハイリスクであることを自覚している直野氏のストイックな対応は、正直南條から見ても「すごいなあ」と感心します。
5. マスクってこんなにスゲえのか!
コロナ禍を経て、マスクに対する考え方ってとても大きく変化しました。
以前は「感染している人が他人にうつさないためのもの」という認識が強かったものですが、コロナ禍で世の中の多くの人が着用する「ユニバーサルマスク」という状態をつくることが、社会全体の風邪の感染拡大を劇的に、というか限りなくゼロに近いレベルまで下げることが、はからずも実証されたんです。
コロナ対策が徹底されていた時期には、インフルエンザもほとんど流行せず、そればかりかいわゆる風邪の流行も大きく抑えられていたのは、皆さんも記憶にあると思います。そしてその対策が緩むと、やっぱりいろんな感染症が流行する世界に戻っていき・・。
一般生活の場において、自分一人だけがマスクをすることがどれくらい感染から身を守れるかははっきりしていません。しかし、病院や在宅医療現場などで感染者と直接接する場面においては、感染者から飛沫を物理的に浴びる量を減らせるというマスクの効果は、感染リスクの低下に一定の期待を持てるでしょう。
在宅医療に関わるスタッフにとっても、自分を守り、同時に訪問先の患者さんを守るためのマスク着用は、今なお重要な役割を果たしています。
6. Q&A:免疫? 水を飲む? 抗生剤?
やはりテーマが身近だったこともあり、Q&Aではいろいろな方向に話題が広がっていきました。
「○○さんってほとんど風邪を引かないよね」・・こんな話を聞くことがありますよね。
なぜ風邪を引きやすい人と引きにくい人がいるのか・・はっきりしたことは言い切れませんが、過去の感染経験による抵抗力を持っていることは一つの理由となっていると考えられます。例えば私のように、小児科医として若手時代にあらゆるウイルスに晒された経験を持つ医師は、結果として強力な免疫を獲得しているため、今になって風邪にかかりにくい・・のかもしれませんね。
また、興味深い研究結果として、風邪を引きにくい人の生活習慣に「頻繁に水分を摂取すること」がみられたという報告があります。
はっきりしたことは分かりませんが、こまめに水分を摂ることで、脱水を防ぐだけでなく、喉の粘膜を常に湿らせてウイルスの付着を防ぐ効果がある・・とも考えられますね。私も冬場は頻繁にお茶を飲むようにしており、これも風邪予防になっているのかもしれません。
一方で、熱が出ないのに風邪のような症状だけが長引く場合は、ウイルスなどの感染そのものではなく、感染をきっかけとしたアレルギー反応や、感染が治まってからも粘膜の炎症が持続して喉や鼻の症状がなかなか治らないという場合もあります。だから「長引くから抗生物質」とは言い切れないってことなんですよね。
7. まとめ:ちょっとした工夫で冬を乗り切ろう
風邪は、医学的には特効薬のない「自己治癒」を待つべき病気で、できることなら罹らずに冬を乗り越えたいですよね。
特に直野氏のように重症化リスクの高い方にとって、本人だけでなく周囲の理解と協力が大切で、我々支援者も感染予防にはしっかり配慮をしていく必要があります。手洗い、必要時のマスクなどの小さな習慣の積み重ねが、在宅患者さんの安心を支えることにつながりますからね。
また、予防接種がある感染症については、もちろん接種をオススメします。何だか変な情報がネット上に溢れてしまったコロナ禍でしたが、「風邪をこじらせるとヤバい」と思っている在宅患者さんについては、打てる予防接種は打っといた方がいいよ・・というのが、南條の基本的な考えであることを、最後に補足しておきます。
ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオについて
「ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ」は、かがやきクリニック院長の南條浩輝と、頚髄損傷患者の直野隆一郎氏が、他では語れない在宅医療のディープなリアルを、お互いの立場から深く掘り下げていこうという、インターネットラジオ番組です。
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