
【開催レポート】ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ 第9回 暑さ対策は「先手必勝!」
2024年8月に行った今回の配信は、年々暑さがひどくなっている中で在宅医療の現場で最も切実な課題となっている「暑さ対策」がテーマでした。
かがやきクリニック院長の私、南條浩輝と、頸髄損傷により体温調節が困難な当事者である直野隆一郎氏が、単なる机上の知識だけではない「現場のリアルな知恵」を深お届けします。
体温調節のメカニズムから最新の熱中症ガイドライン、さらには患者さんが冷房を嫌う心理的背景とその対応まで、命を守るために今日から実践できるヒントが満載!

1. 「先手を打つ」ことが暑さ対策の鉄則
私たちが最も強調したいのは、暑さ対策は「先手を打つ」こと、これに尽きるということです!
特に、直野氏のように暑くても汗をかけない方にとって、一度上がってしまった体温を下げるのは至難の業・・。「暑いかな?」と感じた時にはすでに体内には相当な熱がこもっていることもあるんです。
直野氏は、「3分で上がった体温を下げるには30分、30分で上がった体温を下げるには3時間かかる」という自分への「戒め」を持っているとのこと。例えば、ほんの数分コンビニへ行くだけでも体温は急上昇してしまうこともあり、それを元の状態に戻すにはその10倍以上の時間がかかってしまう・・。
だからこそ、暑さを感じてから対処するのではなく、体温上昇を予防することに意識を常に向けること、さらには外出前や活動前にあらかじめしっかり水分を摂るなどの可能な対策を講じておくことが大切なんですね。
あと、患者さんに水分摂取を勧める時に、お酒も水分と思っている方が少なからずいることには注意しておくべきですね。アルコール飲料は水分補給にはならず、むしろ体温を上げる要因にもなり得るんですよ。

2. 暑さ対策の具体的な手法
実際に暑い環境で過ごす必要がある場合には、「水を飲む」「物理的に冷やす」「清涼感を得る」という3つのアプローチがありますね。
直野氏の場合、体格が大きく、汗をかけないという身体の特徴があるので、工夫に工夫を重ねていて、医師の私も勉強になることがいっぱいあります。
例えば、夏場は1日3〜3.5リットルを目標に意識的に摂取しているとのことで、これは脱水予防だけではなく、汗の代わりに排尿によって熱を逃がすという体温上昇対策にもなっているんです。
また、霧吹きによる言わば「人工的な汗」を使用して、気化熱で体温上昇を防いでいるとのこと。これは最近、屋外でミストのある歩道などが増えていて、暑さ対策では「気化熱最強!」というのを実感する場面は多くなりましたし、納得です。
もちろん、保冷剤や氷嚢、凍らせたペットボトルなどの冷たいものを、首回りや腋窩、鼠径部など太い血管が通る場所に当てることも、体温を効率的に下げる鉄板の手法です。
あと、在宅医療の現場では、ベッドで過ごす時間が長い方では背中がマットに接地しているために熱がこもりやすくなるため、「SOYO(そよ)」のような、空気を循環させて熱がこもるのを防ぐマットを使用している方が多いですね。
直野氏はこれらに加えて、清涼感を得るためのハッカ油や、冷却シートを組み合わせることで、過ごしやすい工夫をしています。なお、こういったグッズは実際に体温を下げるわけではないので、単独では熱中症対策にならないことには注意が必要です!
3. 外出時の「セーブポイント」
直野氏は、外出時の移動ルート上の「涼める場所」を事前に把握しておくんだそうです。よく利用する駅やビルの中で、冷房の風が強く当たる場所を「セーブポイント」と呼び、ロールプレイングゲームの回復地点のようにしているんです。
また、街路樹の木陰などがどこにあるかを知っておくだけでも、そこを目標に歩を進めることができ、長時間直射日光に曝されることを防げますね。電動車椅子の直野氏だけでなく、ベビーカーの小さなお子さんなど地面からの距離が近い方では、アスファルトの照り返しによる影響を大人以上に強く受けますし、予定外のコースを移動することが難しい場合も多いので、事前に陰を把握しておくことは結構大きなポイントかも・・。
また、外出時には、飲料水、霧吹き、ポータブル扇風機の「三種の神器」を必ず携行しているそうです。隙あらば首筋などに霧吹き、冷却!・・という感じ。
私との外食の際にも、卓上扇風機を早めに回すなど、普段からかなり早めに「先手を打つ」直野氏の姿は印象的ですね。
4. 冷房が苦手な患者さんの心理・・
在宅医療の現場では、冷房をつけたがらない高齢の患者さんに遭遇することが多々ありますよね。電気代への懸念、「冷えすぎる」という理由など、いろいろありますが、加齢とともに暑さを感じるセンサーが鈍くなり、自覚がないまま熱中症まっしぐら、という危険な状態に陥っているケースも少なくありません・・。
南條の場合、ロジックで説得するだけではなく、まずは冷房を付けたくない心理への共感から入ることを大切にしています。
その上で、直接風が当たらないように隣の部屋の冷房をつけて扇風機で冷気を送り込むなどの工夫や、タイマー機能を活用して就寝時のみ使用する提案など、患者さんが受け入れやすい妥協点を探ります。
また、室温計を持参して「今、36度もありますよ」という感じで数値化することで、患者さんに納得してもらうのも工夫の一つかも。
「冷房は嫌いだけれど、自分の命は守りたい」、普通はこう考えている方が多いでしょうから、歩み寄りの姿勢でコミュニケーションを取ることが、実効性のある暑さ対策になるのではないでしょうか。

5. 熱中症ガイドライン2024:重症度の判断基準
2024年7月に改訂された「熱中症ガイドライン」の表が上のものです。
1度は、目まいや立ちくらみ、こむら返りなどのみで、意識障害がない場合です。これくらいは現場での冷却と水分補給で対応可能です。
しかし、頭痛や嘔吐、判断力の低下がみられる2度以上では、原則として医療機関への受診が推奨されます。
意識障害や痙攣などがみられる場合には、臓器障害が疑われる3度以上の可能性が高くなり、基本的には入院治療が必須となります。
一般の方が家庭で判断に迷った際のフローチャートとしては、まず「呼びかけに応えるか」、あるいは「普段と意識状態が違わないか」を確認し、おかしいようなら救急要請を考えてもらうのがよいでしょう。
6. よくある間違いに気をつけよう!
良かれと思って行っている対策が、実は逆効果であったり不十分であったりすることもあります。
先にも書いた通り、冷却シートをおでこに貼るだけでは、清涼感は得られても体温を下げる効果はありません。
また、激しい汗をかいていない場合の塩分摂取は、特に高齢者にとっては血圧上昇のリスクを招くだけで、基本的に不要です。
水分補給も、スポーツドリンクに頼りすぎると糖分の摂りすぎになるため、基本は水や麦茶など糖分のないものをメインにするべきですね。
また、子どもは体温調節機能が未熟なことや、体重あたりの表面積が広いために、大人以上に脱水になりやすいことには要注意です。
「喉が渇いた」と言う前に早めに水分を摂らせたり、ベビーカーの照り返し対策を徹底するなど、大人が常に先回りした配慮をしていきましょう。
7. まとめ:とにかく暑さを舐めないで!
暑さ対策のキモは、「まだ大丈夫」という過信を捨てること!!
特に、体温調節に課題を抱える方や、感覚が鈍くなりがちな高齢者、そして環境の影響を強く受けるお子さんに対しては、早めの対応を心掛けましょう。
そうそう、時々高齢者の方は、冷房と思って暖房をかけていたりすることもあるんです! 高齢の親御さんが一人暮らしや夫婦だけで生活されている場合には、電話などで安否確認するだけでなく、たまに家をのぞいて「ちゃんと冷房使ってる?」って確認することも考えてみてください。
ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオについて
「ちょっとだけがんばればできる在宅医療ラジオ」は、かがやきクリニック院長の南條浩輝と、頚髄損傷患者の直野隆一郎氏が、他では語れない在宅医療のディープなリアルを、お互いの立場から深く掘り下げていこうという、インターネットラジオ番組です。
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