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よしなしごと

24時間持続注入

昨年の8月1日に開業後、私のクリニックから訪問診療を行っている患者さんは、小児と成人の方がだいたい半々で推移しています。
いろいろなところで言われているとおり、全体的に小児の患者さんには医療ケアを要する方が多く、また、複数のケア、例えば気管切開と胃瘻からの経管栄養などを同時に要する方も多いのが特徴です。

在宅で行われる医療ケアにはいろいろなものがありますが、今まで新生児科医としては見慣れていて違和感がなかったものの、成人の領域では(ほぼ)全く見ることがないものも中にはあります。
例えば、十二指腸チューブからの24時間持続注入などは、成人の領域の患者さんではお目にかかることが滅多にありません。

病院勤務時代にはそこまで深く考えたことはなかったのですが、実際に在宅での生活の様子をうかがっていると、夜間に何かの処置が必要というのは想像以上に負担となっています。

「持続注入なんて、つないでおくだけだからそう負担でもないのでは?」

なんて思ってしまいがちですが、病院の中と自宅の生活の中では全く意味合いが異なってきます。

例えば、持続注入にはポンプを使うことが多くなります。
病院だと、少々ポンプのアラームが鳴っても、看護師が様子を見て何もなければアラームを解除しておしまいです。
しかし生活の中では、ポンプのアラームが鳴るだけでも、家族はそのたびに起きて確認をしなければならず、睡眠がとぎれとぎれになります。
特に十二指腸チューブは細くて長いので、たびたび軽い閉塞が起きてしまい、それを解除しなくてはならないというのも大きな負担です。
また、兄弟がいるご家庭などでは、アラームで兄弟が起きてしまって寝てくれないまま夜泣きに発展・・などの「二次被害」が発生してしまいがちです。

ましてや、夜間に注入する栄養剤を数時間おきにつなぎ替える必要があると、その準備と片付けだけで夜間に相当の時間を費やすことになってしまいます。

ちょっと話の種類は違いますが、夜に関する比較のために・・。

高齢者では夜間頻尿に悩む人が多いのですが、その定義をご存じでしょうか。
実は、
「睡眠中に、1回以上排尿のために目が覚めて、生活上困っている
というのが定義になっています。

夜の間に1回、自分のおしっこのために起きてトイレに行く。
これだけでも生活上困って治療の対象となる方がいらっしゃるくらい、毎日、日常的に睡眠がとぎれるのは大きなストレスだということです。

もちろん、さまざまな理由で他の医療ケアへの移行が難しく、24時間持続注入しか方法がないという方もおられます。
しかし、病院のスタッフの方には、そういう患者さんに対しても、何か負担を軽減できる可能性がないかを考えていただければ、そして在宅医療の担い手がその工夫の一助となることができれば・・と思っています。

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