在宅医療に携わるようになって、多職種連携の重要性を、とても強く実感するようになりました。

往診を必要としている患者さんには多くの場合、複数の問題点が絡み合って存在しています。

問題点の解決に、医師のみならず、訪問看護師、薬剤師、理学療法士をはじめとするリハビリスタッフ、訪問歯科医、保健師などの医療職、ヘルパー、ケアマネージャー、通所介護施設の職員などの福祉職、小児ではそこに学校の先生や保育所の保育士などの教育職、その他多くの職種の方が関わっていること、そして医師以外の職種の方から発信される情報がとても重要であることを認識するようになりました。

そして、その中でも特に、小児の在宅医療における訪問看護師への見方は、病院勤務時代とは180度と言ってもいいくらい変化しました。

ところで、入院生活をイメージしてみてください。

おそらく、病棟に入院すると、一番患者さんに近い存在は看護師です。

日々の生活を含めて患者さんを見ていて、そこから気がついたことを医師に伝えて、それを聞いた医師が指示を出す。

入院診療にはこういう図式が成り立っていると思います。

では、在宅医療ではどうでしょうか。

医療的側面に絞った話では、やはり、一番患者さんに近い存在は訪問看護師です。

在宅においては、病院以上に、患者さんを家族や生活を含めた視点から看てくれています。

そして、何かあった時、気になることがある時には訪問診療の医師に連絡をして、それを聞いた医師が臨時で往診したり、次回の定期訪問診療の際にいろいろ調整したりするわけです。

こうやって並べて書くと、入院診療での医師看護師の関係と、在宅医療での医師看護師関係は似ていませんか?

いや、在宅では生活の中に医療を持ち込んでいる分、生活を看る視点を持つ看護師の役割は、入院中よりいっそう重要だと言えるかもしれません。

さて、ここからが本題です。

大阪府下の自治体では、いわゆる「乳幼児医療」の助成対象から訪問看護が除かれているのです。

2009年に大阪府で行った調査(http://hirokinanjo.com/doc/report_01.pdf)では、大阪府下341カ所の訪問看護ステーションに小児の訪問看護についてアンケートを行ったところ、設問を準備していなかったにもかかわらず、実に14ものステーションから「訪問看護の医療費負担が重すぎる」という意見が自由記載欄に寄せられました。

その中には、医療費負担が重いために、本来なら訪問して欲しいと思っていながらも継続できなかった例や、訪問回数を増やしたくても負担が増えるために増やせない、という例などの記載もありました。

訪問診療には乳幼児医療の助成があるが、訪問看護には助成がない。

これを入院診療にあてはめてみたらどうでしょうか。

入院中の医師の診察には乳幼児医療でお金がかからないが、看護師にオムツを替えてもらったり、キズの処置をしてもらったり、点滴の薬をつないでもらったりしたら、お金がかかる。

自分の子どもの入院にあてはめると、おそらく誰もが、

「そんなバカな話があるか!」

と怒るのではないでしょうか。

しかし、在宅医療ではこれが現実なのです。

ただでさえ認知度の低い在宅医療の中でも、特に小児については認知されていない現状です。

そのため、在宅で医療行為を必要としながら生活する子どもたちに対してのイメージがなくて、訪問看護がどういう位置づけなのかという発想自体が行政の方になかったから、こんな状態になっているのかな、と思ったりします。

しかし、上述の通り、訪問看護は在宅医療の中心的な役割を果たしている職種であり、この認識が変わらない以上は、どんなに病院の先生たちががんばっても、今後小児の在宅医療を推進していくことは困難になっていくのではないかと思っています。

根本的な問題としては、小児には成人の介護保険のように、重症度に応じて必要なサービスを受けられる制度がないことがあります。

本来は重症度別の医療費補助制度が構築されることが望ましいのは間違いないのですが、それには時間がかかるでしょう。

そんな中、言わば「頼みの綱」の乳幼児医療。

ぜひ小児の在宅医療の実情を広く知ってもらい、訪問看護の必要性に目を向けていってもらえたらと考えています。