小児在宅医療においては、教育機関との関わりがいろいろ出てきます。
その中で、一般の小学校や中学校などに通っているお子さんの場合には、その学校の先生や看護師さん方が、何をどの程度対応してくれるのか、市町村や学校、あるいは年度ごとに大きく異なるのが実情です。

このたび、訪問先のお子さんで以下のようなことがありました。
(ブログへの掲載についてはお母さんの許可を得ております)

小学校5年生のSちゃん。
生まれた時に高乳酸血症があり、いろいろな検査を受けられましたが診断がつかず、数年後にミトコンドリア病と診断されました。
今でも体調不良時にたまに乳酸値のチェックをする必要がありますが、それ以外には特に医療的なケアは必要ありません。

ただ、Sちゃんは、ミトコンドリア病の診断を受ける前に、感染症のために病院に入院中に心肺停止を起こし、蘇生を受けたことがあります。
しかしその後、診断がきちんとついたため、内服薬での治療や感染症時の対応もできるようになり、小学校に入学後には大きな体調の変化なく過ごせています。

今年の夏、5年生のSちゃんは臨海学校に行くことになります。

Sちゃんのお母さんは、宿泊での研修に、Sちゃんが単独で参加することを望んでいます。
そのための話し合いをこれまでにも何度も重ねてきて、医療側からも、現在のSちゃんには体調の急変の可能性は低く、単独での参加について大きな問題はないだろうという意見を、お母さんを通じて学校側に伝えています。

しかし、学校側からの返答は、
「お母さんの付き添いがないと臨海学校への参加は難しい」
というものだったそうです。
その理由は、過去に心肺停止を起こしたことがあり、臨海学校への参加中に起こるかも知れないから、と説明されているとのこと。

これを聞いて、かなり残念な気持ちになりました。

この仕事をするようになって、一般校の先生方が、特別な医療的配慮を要する子どもたちに対応するのに、色々苦労をされているのを、これまでにも直接的、間接的に見させてもらっています。
それでなくても今の学校の先生って、授業以外にもいろんなことに時間を取られて大変だということも、自分の子どもの学校の様子を聞くだけでも感じるところです。

ただ、今回の件については、ちょっと過剰に心配されている感が否めないなと・・。

人間、誰だって、突然の心肺停止が起こらないという100%の保証のもとで生きている人はいません。
大人も子どももです。
Sちゃんは一度そういうことがあったとは言え、それは診断がつく前の話で、しかも感染症での入院中の話です。
今は内服薬などでの対策を取られていて、それからは一度も同じようなことは起こっていないのです。
この状態で、心肺停止のリスクが高いからお母さんの付き添いを要する、というのは過剰かなと思いますし、その旨を医師からの意見としても伝えられているのですが・・。

しかも、そもそもの話として、仮に心肺停止を急に起こす可能性が高い児であったとしても、そこにお母さんがいるかいないかで発症リスクが上下するわけではありません。
研修中には看護師さんの付き添いもあります。
そこにお母さんが付き添うことに、何のリスクをどれだけ軽減することを期待しているのかがよく分からないのです・・。

「よく分からないことへの不安」があるのはもちろん分からなくはありませんが、今後、医療的な配慮を要する子どもたちが一般社会で生活することは、増えこそすれ、減ることはありません。
この小学校では、こういった対応をすることが初めてらしいというのがお母さんのお話でした。
こういう機会をきっかけに、医療職以外の方にも少しずつ理解を深めてもらい、壁を低くしていってもらいたいなと感じるところです。