<先のブログに続き、今回のブログは医療関係者に向けた内容ですので、一般の方には不快に感じられる表現が含まれているかも知れません。
ご覧いただく方にはまず最初にお詫び申し上げます。>

2月18日のブログ記事(「在宅医療」という言葉 )は、予想以上に多くの方からの反響をいただきました。
新生児科医から在宅医へと転身してもうすぐ6年、0歳児から100歳を超える方まで、しかも関東と関西の両方で、多くの方の診療をさせていただいたおかげで、私は在宅医療の在り方についていろいろ考えることができたと思っています。
先のブログ記事の「在宅医療の3つの形」については、議論を単純化するために、

(1)外来診療の出前
(2)入院診療の在宅化
(3)軽症施設入所者への医療の提供 

という、あえて少し目を引くような表現を用いました。
そのため、ご気分を害された方もおられたと思います。申し訳ありませんでした。

しかし、この分類は乱暴なことは承知の上で、今の日本で在宅医療の議論をする上では、必要な切り分けであると私は考えています。
このあたりのことについて、先日よりFacebookで議論することがありました。その中で、沖縄県立中部病院の高山義浩先生より、「病院サイドから見たときの在宅医療の分類は、また違う形に見えている」というご指摘がありました。
病院サイドからは、

(A)通院困難な慢性疾患患者への訪問診療
(B)急性期疾患での入院の退院後の在宅療養支援
(C)終末期患者への在宅緩和ケア

の3つに分かれるのではないかとおっしゃるのです。
そう言われてみると、私の書いた3つの分類は、在宅医療の現場からの見え方だったかもしれません。

急性期病院の側から見た在宅医療へのニーズ、その最大のものは、
「一度退院した患者さんが、簡単に再入院してくることがないように、在宅での医療・介護的サポートを構築すること」
だと言えると思います。(もちろん本当に入院で治療が必要であれば再入院になるのですが、避けることがある程度可能な再入院も多い現実があります)
これに対して、在宅医療機関には3つのアプローチが必要だということではないでしょうか。つまり、

(A)通院困難な慢性疾患患者への訪問診療
によって、慢性疾患のコントロールをきっちりと行い、急性増悪や誤嚥性肺炎などの突発的な疾病を予防し、これらによる入院頻度を減らすこと。
また同時に、介護的問題での入院長期化や再入院が減るよう、介護職と連携すること。

(B)急性期疾患での入院の退院後の在宅療養支援
何らかの急性疾患での入院治療が終了し、退院した後にも医療的対応が継続して必要な場合(例えば気管切開や在宅人工呼吸、中心静脈栄養や経管栄養、ストマなどの医療的ケアが必要となった場合)などに、これらの管理を適切に行い、在宅生活を維持すること。
・・小児在宅医療は主にここに位置すると思います。

(C)終末期患者への在宅緩和ケア
急性期病院での根治的治療が奏効しなくなった段階で、QOL重視の在宅緩和ケアを提供し、看取りを含めた対応を行うことで、いわゆる「緩和救急」での再入院頻度を減らすこと。

これらは全て入院頻度の減少に効果を上げる可能性があるものだと言えるでしょう。
在宅医療側からの分類と、病院(主に急性期病院)からの分類を合わせると、下の表のような感じになりそうです。

12063834_1000500556702362_2212054677243777620_nこの9つの分類を見ていると、何となく在宅医療の現実が見えてくる気がします。
表のように、病院から見た在宅医療ニーズに対して、在宅医療側の提供体制がどのように受け止めれば良いのかを考えることは、今後の在宅医療の効率化を考える上では重要ではないかと思うのです。
(表中の右上と左中の部分は空白にしているのは、現時点でここにあてはまる患者層が想定しにくいからです)

さて、「効率」には
①時間またはマンパワー的効率と、
②費用対効果
の両方があります。

在宅医療では病院での医療に比べて、圧倒的に①の効率が悪いのは明らかで、この部分の効率化は避けて通れないことだと考えています。
そして、その方向性には、
1)マンパワーの集約(つまり在宅専門型在支診・連携強化型在支診などによる人的資源の集約・時間効率の改善)と、
2)居住者の集約(つまり施設に集まって住んでもらうことによる移動時間ロスの削減)、
の2つが両方必要ではないかと考えます。

上記の表で言うと、中中、中右の部分には臨時往診対応の必要性が高い方が多くなるので、ここにかなりの人員や時間をさく必要性があります。
どちらかというと、在宅専門型の守備範囲をこちらに持って行くことは理にかなっているのではないでしょうか。
一方で、左上、中上の部分には、外来診療の延長線上でも可能なことがたくさんあります。
mix型でフットワークの軽さを維持するのが難しい医療機関であっても、この部分には「かかりつけ医」としての医師-患者関係は大きなアドバンテージになり得ると思いますので、主にこちらを守備範囲にされていることが既に多いのではないかと思います。
こういう医療機関の特性による「住み分け」は、①の効率化に寄与すると思うのです。

一方②については、「在宅医療の質」を語る際に今後もっと重視されるべきだと思っています。
一在宅医療の結果、どれだけ入院期間を短くでき、再入院を回避できたかが可視化できれば、②の大きな指標となり得ると考えています。
そういう観点で見ると、在宅看取り数は、最期の再入院を回避した数をカウントしているという意味で、ごく部分的にですが②の評価になっているのではないかと思います。
後は、例えば「無診療救急搬送率」なんてものを出すことができれば、これが高い在宅医療機関は費用対効果が低い可能性が高いかも・・なんて思ったりしています。
(もちろん、診療している患者さんの層によってかなり上下しそうな指標ですが・・)

そして、独居高齢者が増加することが予想される今後、施設で提供される医療のレベルを上げ、「何かあったらすぐ救急車」ではない対応ができるところが増えれば、①②ともに貢献すると言えると思います。

さらには、2025年問題に向けて、在宅医療の応需能力を上げる必要性があります。
そのためには、在宅専門型の医療機関の医師が増えれば、キャパシティーが一気に増加するので、これが一番の近道ではないかと考えていますが、既存の医療機関の連携でもかなりのことができるかもしれないと感じます。

例えば、当クリニックの周囲では、泌尿器科や皮膚科などの開業医の先生の中に、他の在宅医の先生からの依頼を受けて、専門的診療を在宅で行いフォローしてくださる方が結構おられ、私も大変お世話になっています。
例えば、前立腺肥大症のために尿道バルーン交換が非常に難しい男性の方に、バルーン管理のみを泌尿器科の開業医の先生が行い、内科的全身管理を主となる在宅医の先生が行うというような連携を行っているのです。
このような複数医療機関による在宅医療の提供によって、主となる在宅医の先生の苦手な分野を専門科の先生に補完してもらうことで、より複雑な医療的ニーズに在宅で対応できるようになり、表の中中、中右に位置する患者さんへの地域の応需能力が上がるでしょう。

また、「岸和田在宅ケア24」に代表されるような、mix型の複数医療機関による夜間休日診療の当番制や、医療法人社団悠翔会さんが行われている、言わば「在宅医療24時間対応当直システム」のような取り組みも、在宅医の負担軽減により、もともとのかかりつけ医に在宅でも継続して診療してもらいながら、24時間対応もしっかり受けられることで、応需能力の大きな上昇につながるのではないかと注目させていただいています。


・・と、偉そうなことを長々と書いてきましたが、当クリニックは常勤医師1名体制での在支診であり、まだまだ不十分なことがたくさんあります。
これからも、地域医療のためにできることを考えていきたいと思いますので、ご指導のほどお願い申し上げます。

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