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よしなしごと

「第26回全国保育園保健研究大会」感想

この週末に、クリニックのすぐ近くにある「ビッグアイ」で「全国保育園保健研究大会」が開催されました。

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昨年、堺市の保育所嘱託医・保育所職員懇話会で「医療的ケアや医療的な配慮を要する児への対応」というテーマでお話しさせていただいたご縁で、今回の研究大会のことを教えていただき、1月24日のシンポジウム「保育所における医療的ケアと保育所看護師の役割」に参加してきました。

まず、大阪大学の永井利三郎教授から基調講演として、重症心身障害児の気をつけるべき特徴と対策や、小児の在宅医療、特別支援学校や保育所など多岐にわたる様々なアンケート結果や研究データの紹介がありました。
その後に3名のシンポジストの方が発表されました。山上佳代子先生は保育所嘱託医の立場から、濱田美智恵先生は保育所所長の立場から、上條陽子先生は保育所看護師の立場から、実際に対応されてきた事例を交えながら、現場でどのようなことに悩みながら対応をされてきたのかお話がありました。
その後の総合討論でも、実際に医療的ケアを要する子どもを受け入れている保育所の看護師さんなど、フロアからの活発な質問があり、この問題への関心の高さをひしひしと感じました。
手を挙げてコメントしようかと思ったこともあったのですが、ほとんどが女性の会場で熱気に気圧されてしまい、その場では遠慮してしまいました(^_^;)

私もこれまでに、医療的ケアを要する子どもが保育所に入所したいという希望について相談を受けるケースが何度かありました。
しかし、保育所がどのような体制で医療的なニーズに対応しているかを、私自身これまでほとんど知らなかったので、昨年の懇話会でお話しする機会をいただいた際、初めて勉強したような状態です。

以下のような保育所の実情を、これまでの私同様、知らない小児科の先生は多いのではないかと思います。
(付け焼き刃の知識なので、間違いがあればコメントなどでご指摘ください)

・そもそも保育所には法的に看護師の配置義務がない
 (自治体ごとに義務としているところや、乳児数などにより配置の努力義務はある)
・看護師がいる保育所でも、1人しかいないところがほとんど
・看護業務専任ではなく、保育業務と兼任している看護師が7割以上

つまり、保育所の看護師さんは必ずしも全ての保育所にいるわけではなく、看護師さんのいる保育所でも、預かっている多数の子どもの健康チェックなどが主な看護業務で、一方で保育士さんと同じように保育業務も行っているわけです。
また、いわゆる臨床業務から離れて保育所の看護業務のベテランとなっている看護師さんも多く、そういう方にとっては医療的ケアに接する機会も少なく、対応に困難さを感じるのも当然かもしれません。
こういう体制のもとで医療的ケアを要する子どもへの対応を求められると、それは悩むだろうなと思います。

一方で、小児科医の立場からみると、医療的ケアを要する子どもにも集団の中で保育を受けることで成長を促せる期待があったり、お母さんの就労などのために保育所の利用をしたいケースがあるのは間違いありません。
私自身も、医療的ケアを要する子どもの受け入れが進んでほしいと思うところです。
今回のシンポジウムのシンポジストの方々や、フロアの発言者の方からは、こういうニーズを強く感じつつ、できることをしてあげたいと思いつつ、現実との狭間で悩んでいるということがとてもよく伝わってきました。

そういう中で、永井先生の示されたデータで興味深いものがありました。
某都道府県で、障害児保育の受け入れについて市町村にアンケートを行ったところ、保育所への受け入れを決める判定会の構成メンバーに医師が加わっているのは2割弱で、ほとんどの市町村では行政担当者・保育所責任者・心理士その他で構成されており、医療職が関与していないのです。

これだけ医療的ケアを要する子どもが増え、保育所入所のニーズも高まっている中、保育の現場と医療職との間にはまだまだ接点が少ないのが現状です。
大阪府下では、小児在宅医療に対する地域との連携を深めるために、様々な形で病院の小児科医が多職種と話し合う場を作ってきたことにより、訪問看護をはじめとする在宅医療の担い手とのコミュニケーションはかなりとれる体制ができてきています。
同様に、保育の現場の方にも多職種の集まる場で意見を述べていただくことや、医療職が保育の現場を見てどのような課題があるのかを一緒に考えていくことなどが、今後のためには必要ではないかと感じました。

もう一つ、在宅医療の担い手の側としては、訪問診療や訪問看護が原則として自宅のみに認められていて、保育所などの通所先や学校などへの訪問が認められていないことは、大きなハードルとなっています。
地域ごとの取り組みとしては、訪問看護師が保育所や学校に行って、一緒に医療的ケアを行うことで、保育所や学校の看護師が慣れるまでをフォローするような体制を作るところもできているようです。
在宅医療の担い手がもっとフレキシブルに対応できるような制度があれば、保育所への入所ももう少しハードルが低くなる可能性があるのではないかと思っています。

昨年以来、保育所の問題については、私にとって勉強のいいきっかけになりました。
これからもできることを考えていきたいと思っています。

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