依頼原稿が一応の完成となった。
原稿を書きながら感じたことを振り返ってみると・・・。

新生児科医が在宅医療に興味を持ち始めたのには、
「NICUが満床で長期入院児をもっと在宅移行させたい」
という病院側の都合が多分にきっかけとなっているところがある。

これはこれで、社会全体で見たときに、限りあるベッドをどうやって使っていくかという視点は確かに必要。

しかし。
退院後の子どもの状態はもちろん、自分たちの生活がどうなるのか、将来はどうなるのか、など不安は大きいし、家で育てていこうという結論に達するまでにかかる時間は人それぞれ。
それ以前に、産まれてからNICUに入院した子どもと両親の関係ができていくまでにかかる時間も人それぞれ。

そういった中、病院スタッフはどうしても退院することを「目標」として設定してしまうところがある。
そのために、
「両親が子どものケアをできるようになること」=「退院可能」
という考えが先行してしまうことも珍しくない。

話はそれるかもしれないが、日本はとにかく
「子どものことは親がやって当たり前」
という風潮が強いなと思う。
小児病棟の入院も、親が仕事を休んで付き添って当たり前。
当然、家で必要な医療的ケアは、親がやって当たり前。

こういう風潮は、子どもの在宅療養を考える上で視点のズレを生む原因のひとつになる気がしている。
「両親と、その中で育つ子ども」
という当たり前の枠組みよりも、
「介護者と、被介護者」
という視点が強くなってしまうが、あくまで両親は子どもの親で、単なる介護者ではない。

在宅移行の際、子どもと両親にとって、
「家で一緒に生活するのが、みんなにとって幸せだよ」
という、当たり前の前提をみんな意識して、そこを「目標」にできているだろうか。

もちろん現状では、小児に在宅で使えるサービスがそもそも圧倒的に足りず、両親とりわけ母親にかかる負担が重いのは間違いない。
しかし、地域には様々な形で何とかしようとしている人たちがいる。
探せばキーとなりうる人がいるかもしれない。
そこが病院とうまくつながり、退院前から病院主導ではなく、早い段階から地域と協働して在宅移行を検討できれば、もっといい形が見えるかもしれない・・・と思う。

今は地域側で頭を抱える日々だが、振り返ればつい9ヶ月前までの自分の思考回路は・・・。

とりとめがなくなったが、自戒の念も込めながら、少しずつでも溝を埋めていけるようにしたいと感じた原稿依頼だった。