何よりもまず、亡くなられた女性のご冥福を心よりお祈りいたします。

大野病院事件が昨日一応の決着を迎え、医師は無罪に。

遺族の方の感情的な部分は、もちろんわからないでもない。
しかし、やはり今回の医師はどう考えても有罪には値しないだろう。
与えられたフィールドで、限りある資源(マンパワーも含め)で、自分の技術と知識の限りを駆使して診療にあたった結果、満足な結果が得られなかったという事例である。

「ミスがなかったらなぜ死んだのか」

という質問が、遺族の方の発言からも、医療従事者でない方の意見の中にもみられる。
しかし、声を大にして言うが、

「ミスがなくても母親が死ぬことがある」

のがお産というものなのだ。

以前にも書いたが、日本では10万回のお産で5人のお母さんが亡くなっている現実がある。
戦後には150人だったのが、医療の進歩でここまで少なくなったのだが、ゼロにはできていない。
事実、自分が医師になってからの7年で、母親を亡くした赤ちゃんを診たことがある。もちろんミスがあって亡くなったわけではない。
さらに、母親が瀕死になったが何とか回復したという話は、この仕事をしていると結構聞く。
いくら医療が進歩したと言っても、万能ではないのである。
申し訳ないが、この女性に関しては、不幸にしてその5人の中に入った方だと言わざるを得ない。

お産に関しては、周囲の期待が大きすぎる(うまくいって当たり前と思われている)ため、期待と違う結果が待っていたときには「ミスでは?」と思われてしまいがちである。
医療従事者でない、妊婦さんやそのご家族が、そういう意識を持ってしまうことはある意味しかたがない部分はあると思う。
しかし、問題は、それを煽るマスコミ、そしてそれに流されたような形で動いた警察・検察にあると思う。

判決の中で、裁判所は検察に対し、今回の起訴そのものが「行き過ぎ」だったという戒めに近い言葉を込めていたように思う。
検察には、間違っても控訴などしないようにしていただきたい。