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よしなしごと

結審

大野病院事件を皆さん覚えてますか??

逮捕された医師の裁判が1月25日に結審したらしい。
判決は夏頃?という話。

この医師の逮捕は医療界を震撼させ、裁判の行方については皆我がことのように心配して成り行きを見守っている。
理由は、こんなことで医師が逮捕されてたら、医療が成り立たないから。

言いたいこと、その1.

まず、「お産は安全」だという誤った認識が広まっているのがこの事件の根本にある。
確かに日本での妊産婦死亡率は激減してきたが、それでも10万人のお母さんが出産すると、5人前後のお母さんは亡くなっているのだ。
ちなみに戦後すぐには10万に対し150人くらい亡くなっていたのだから、医学の進歩の結果と言える。
ただ、これをゼロにすることは不可能で、お産とは残念ながらそういうものだということを、一般の方々も認識しないといけないと思う。

ちょっと話がずれるけど、最近「できちゃった婚」が「寿婚」とかいう呼び名に替わったりして、何か普通のように考えだしているふしがある。
でも、一面だけに注目して言うと、まだ結婚していない女の子に10万分の5で死ぬかもしれない危険なイベントに向かわせる、ってことで、こういう風潮も「お産は安全」という誤解のせいのような気がする。
社会全体が、「子どもを産む」ことのプラス面ばかり強調して、命の危険を伴うという部分を軽んじすぎているのでは・・・。

もとの話に戻って、言いたいこと、その2.

医療行為によって期待される結果が得られなかった場合、その結末のみを見て「過失」だの「責任を果たしていない」だのと言われると、医療行為自体が行えなくなる。
医療行為を決めるのはあくまで確率論でしかないのが現実である。
例えば薬にしたって、プラセボだと30%の人が効果を感じたが、本薬だと70%の人が効果を感じた、というようなレベルで「効果あり」とされて売られるのだ。
手術などもそうで、手術をしない場合とした場合の5年生存率を比べて、30%が70%になれば、その手術は「効果あり」ということになる。

進行したがんなどで、期待される結果が得られない確率が30%もある手術なら、しっかり説明を理解していたら、結末が残念ながら期待はずれでも「ミスだ」と騒ぐ人は少ないだろう。
しかし、帝王切開などは期待される結果が得られない確率が低いため、結末が期待はずれになると「何かミスがあったのでは」という目で見られてしまう。
この事件などはまさにそう。
術前に予想を付けることがまずできないものが、運悪く(遺族の方には申し訳ない表現ですが)手術中に見つかり、最善を尽くしたが残念な結果に終わったという事例である。
これを「ミスだ」と言われるのなら、何がどうミスなのか?
残念ながら、どこの誰が帝王切開をしても、よほど潤沢に血液をストックしている施設ででもない限り、ほぼ助からなかったと思われる。

遺族感情も理解はできるので、民事訴訟になるのはある程度仕方ない(それはそれで恐怖ではあるのだが)。
でも、これを「罪」とされるのなら、医者なんて誰もやりたがらなくなる。
事実、こんな事件が繰り返されたせいで、日本の産科、小児科、救急部はどんどん医者がやめ、新しい医者が来ず、最近では救急車の受け入れ拒否として問題が表面化してきた。
結果的に国民みんなが損しているのだ。

言いたいこと、その3.

それでももしこの医師が有罪になったら、日本中の医師みんなで警察に出頭しましょう。
これが有罪なら、オレも有罪だね。
1歳のまるまるとした子どもに点滴を入れようとして、失敗したため3回刺しなおした、なんてことしょっちゅうある。
挙げ句に点滴が入らなくて、内服薬だけで帰宅させたりしたことも。
この医師が有罪ってんなら、オレもこれで業務上過失傷害罪でしょう。
同じような経験、臨床医ならみんな一度くらいあるでしょう。
みんなで、「オレも捕まえて裁いてくれ!!」って出頭しましょう。
そしたら警察、検察も考え直すんじゃないかな・・・。

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