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よしなしごと

和歌山と徳島でお話しして・・

少し前の話になってしまいますが、昨年12月9日、私の故郷である和歌山市で開かれた「小児在宅医療実技講習会」でお話の機会をいただきました。
また、2月3日には、徳島市で開かれた「在宅療養児支援関係者研修会」でも講演させていただきました。
どちらの会にも多くの方のご参加をいただき、ありがとうございました。

そして、どちらも質疑応答の時間には、多くのコメントや質問をいただきました。
おそらくどの地域でも、長期入院となっている子どもの退院の支援や、在宅生活を送る子どもと家族への支援は喫緊の課題であり、質問の内容からは、その課題を解決するための「特効薬」のようなものを私に求められていた方も結構おられたのではないかという気もしました。

しかし、手前味噌ながら、小児在宅医療について比較的うまく行っていると思われる大阪について考えても、少なくとも私が開業するよりはるか以前から、様々な取り組みが地道に行われてきて、その結果が今の形につながっています。
決して、私が開業してポンと何かが変わったとか、誰かが何かをやり出したから一気に連携が進んだとか、そういうことではない歴史を感じるのです。

例えば・・。

大阪、特に私が開業している堺市やその近隣では、大阪母子医療センターに通院している子どもが多く、私が訪問している小児の患者さんの約8割の方が同センターからのご紹介です。
堺市の近隣である和泉市や富田林市では、私がまだNICU勤務をしていた9年前にすでに、保健所の保健師さんの声かけで、開業医や訪問看護師などの小児在宅医療に関わる職種が集まり、勉強会などが定期的に開かれていました。
私は勤務医時代に、新生児科の先輩と一緒にその勉強会に出席させていただく機会を得ました。
そこでは、病院から依頼を受けて小児在宅医療に取り組んでいる訪問看護師さんや、小児にも訪問診療を行っている成人領域の在宅医の先生から、現場で困っているお話や、どうすればもっと安心して小児在宅医療に取り組めると思われるのか、などについて、「生の声」を直接聞くことができました。

「小児在宅医療の勉強会は病院でも開催しているから、そこに来てくれる方から意見を聞いてるよ」
そうおっしゃる病院の方もおられるでしょう。
しかし、私はこの時、「病院のスタッフが地域に出て行って話しあう」という意味は大きく、小児在宅医療の推進には必要不可欠ではないかと思いました。

その当時の保健所では、初めて会う訪問看護師さんや開業医の先生が大勢おられ、「生の声」には病院に向けたかなり厳しい意見もありました。
おそらくこれは、小児在宅医療の現場でがんばっておられる方の本音の吐露だったのだと思います。
そして、本音の吐露ができたのは、この勉強会が訪問看護師さんや開業医の先生にとって「ホーム」である自分の地域の保健所で開かれたからだったのは間違いないと感じたのです。
訪問看護師さんや開業医の先生にとって「アウェイ」の大病院で開かれる勉強会では、他地域から多くの知らない方が集まることや、よく知らない病院のスタッフに囲まれているため、抱えている課題が他の地域でも共有されるかどうか分からない上、知らない人の中で「自分はこんなことに困ってるんだ」という発言をするのにはかなりの勇気が必要です。
しかし、「ホーム」である自分の地域に病院のスタッフが来られた場合、同じ地域内で悩みを共有しているメンバーが集まっているため、その地域で実際に困っている具体的な課題について話すことができる上、心理的にも「ホーム」なので、大病院での発言のような勇気を求められることがあまりありません。

その頃からずっと今も、大阪母子医療センターの先生方や看護師さんが、保健所の勉強会には出席され、直接顔をあわせて話をする機会を定期的に持ち続けてくれています。
保健所単位での取り組みが続いていることと、そこに病院のスタッフが関わり続けているということが、当地で小児在宅医療の支援体制の整備が進んだことに大きく寄与したのは間違いありません。

小児在宅医療を考える時、大きな障壁の一つは、病院のスタッフと在宅医療の担い手との間にあまり面識がないことです。
誰に頼むと何をやってくれるのか分かっていない病院のスタッフが、何をしてあげるといいのかよく分からない地域のスタッフに対して仕事を依頼する、という根本的な構造を何とかしないと、なかなか腹を割った話し合いができません。

「どうすれば小児在宅医療に取り組みやすくなるの?」
という課題には、地域の医療や福祉のリソースの状況によって、答えが大きく異なってくると思います。
それを把握できる保健所管轄区域ごとくらいが、議論の枠としてはちょうどよいのではないかというのが、私の今までの経験からの印象です。
そして、課題への解決策には、「今日からできること」「長期的に取り組むこと」の両方があるはずです。
それを明らかにして、地域と病院が一緒に解決策を具体化させていくことの積み重ねが必要ではないか・・と思うのですが、いかがでしょうか。

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