6月9日の夜、福井県の「オレンジホームケアクリニック」の紅谷浩之先生の講演を聴いてきました。

私は、紅谷先生のことは以前から存じ上げていましたが、お話を聴くのは初めてでした。

もともとは成人領域の在宅医療を行うクリニックを開設されたのが、現在は数多くの子どもたちに訪問診療を行い、さらには「キッズケアラボ」という医療的ケアを要する子どもの預かり施設を立ち上げられたという、とてもパワフルな先生です。

もちろん、多くの成人の方への在宅医療もされていて、医療機関と言うよりもむしろ「地域作りの拠点」のようなクリニック運営をされていることを知りました。

また、

新生児科医→小児在宅医療→成人在宅医療

と、すごく狭い専門的医療分野から地域に出て行くようになった私とは正反対の流れで、

僻地医療→成人在宅医療→小児在宅医療

という形で仕事を広げてこられているところが、大いに興味のあるポイントでした。



講演では、本当に多くの刺激を受けました。ここに書き切れないくらい、心に残ったお話がたくさんあります。

懇親会でお話をさせていただくと、私と同い年ということもわかりましたし、これからはどんどん情報交換させていただきたいと思っています。



そんな紅谷先生からいただいたお話で驚いたのは、上で紹介した「キッズケアラボ」を利用している子どものお母さんは、かなりの率(!)で就労されているとのことなんですね。



一方、先日文科省から公開された、特別支援学校での医療的ケアを要する子どもの保護者付き添いに関する資料がこちらです。

上のグラフを見ると、医療的ケアを要する特別支援学校の児童生徒のうち、保護者(ほとんどの場合はお母さん)の付き添いを全く必要としないのは約1/3で、あとの2/3は日常的に付き添いが必要なんですね。

下のグラフは付き添いを要する日数で、週5回と週1回が多いのは、おそらく「保護者の付き添いを必要とするので、行きたくても毎日通えない」という方が大多数を占める結果で、「週1回付き添い、あとは付き添い不要で通学」というケースは少ないのではないでしょうか。

講演では、福井県でも学校への保護者の付き添いを求められるケースが多いのが現状とおっしゃっていましたので、おそらくこの課題は共通のものでしょう。



一方で、私が小児在宅医療に興味を持ちだした10年前と比べても、子どもと親を取り巻く環境は相当変化したと感じます。

良い変化もありますが、経済的余裕のないご家庭、シングルマザーのご家庭が明らかに増えてきたことなどは、今までの古典的な家族像(サラリーマンと主婦に子ども)を前提にしたこれまでの対応では支援が難しくなってきている理由の一部でしょう。

そのような環境変化が起きている現在、「お母さんの就労支援」は、小児在宅医療において今後は一定の「ニーズ」として捉えていく必要性があるだろうと感じています。

障壁はいっぱいあり、簡単なことではないと感じますが、一つの要素として、学校への保護者の付き添いを減らしていかねばこのニーズへの対応は困難です。



しかし、教育の現場への負担だけが増えることは避けなければなりません。

具体的にはどういうことを変えていく必要があるのか・・?

少なくとも、今のように学校で医療スタッフを雇用すると教職員が減らされる、というような形は改善されなければならないでしょうし、医療側が教育の側に近づいて、本当に顔の見える関係を作ることで困りごとに対応できるようにバックアップする連携システムが必要ではないかと思うのです。



一朝一夕にできることではないとも感じますが、これからマジメに考えていこうと思った9日の夜でした。